NTTコミュニケーションズでもコロナの感染拡大とともにリモートワークを定着させ、この約2年間、約8割の社員が日常的にリモートで働いている。その結果、思わぬ「成果」があったという。毎年行なっている従業員満足度調査で、女性たちの職場や働き方への満足度が上がったのだ。(全2回の2回目/前編を読む)

リモートワークで上がった女性たちの満足度

「男性も上がり、男女ともに過去5年で一番いい数字でした。それまで女性は男性に比べて数ポイント低いのが当たり前だったのが、女性の方が急激に満足度が上がり、男性と並びました。年代別に見ると20代30代が特に上がりました」(山本恭子ヒューマンリソース部長)

 NTTコミュニケーションズでも20年ほど前から「eワーク」というリモートワークの制度を導入していた。2007年からは育児や介護を理由に週1、2回のリモートワークをと呼びかけたものの、同じチームのメンバーから「あの人はリモートワークやっている人だから」と見られ、リモート組は職場のマイノリティだった。それが2020年2月に社員だけでなく、派遣社員も含めて全面的にリモートワークに移行したことで会社の風景は変わった。

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「個人的にはダイバーシティを妨げる要因の一つが、働いた時間に対してお金を払うという日本型の労務管理だったと思っています。リモートワークの定着で、顔を合わせて長く働くことがいいという前提が劇的に変わった。管理職ポストを社内で公募する際にも、『時間と場所の制約なく働けるポストはこれだけありますよ』と募集すると、女性から多く手が挙がるようになりました」(山本さん)

 現在女性管理職比率は7.9%。2025年までに15%にする目標を掲げ、現在は新任課長の3割を女性にすることを目指している。

転勤制度の見直しに踏み込む企業

 リモートワークの定着は、これまで通勤可能な地域に住むことが原則だった居住地を全国に広げることにもなった。ヤフーは2022年4月から従業員約8000人に対して居住地の制限を原則撤廃し、同様の対策はメルカリでも始まっている。こうした施策は、例えば親が住んでいる地元に住み、子育ての支援を受けながら仕事を続けられるようにもなるだろうし、地方に住む親の介護のために退職を選ぶ人を減らすことにもなるだろう。

 女性が働き続ける上で大きなハードルの一つが転勤だったが、この「辞令一つで全国何処へでも」ももう当たり前の風景でなくなりつつある。女性たちはこれまで自身の転勤だけでなく、配偶者の転勤によって育児や家事を一人で抱え込む「ワンオペ状態」になり、仕事との両立の大変さから望まない退職を選ぶことも珍しくなかった。

 日経ビジネスが約70社に調査したところ、約8割の企業が転勤制度の課題感を感じている。その課題感のうち最も多かったものが、「子育てや介護といった制約のある社員が増えている」だった。企業側にとっても、これまで働き続けてきた社員たちが転勤を機に退職を選択せざるを得なくなることは「課題」なのだ。

【日経ビジネス】70社の人事に聞く「わが社が転勤制度を見直す理由」さらば転勤 変わる日本型雇用(第2回)