それがリモートワークの定着で、転勤の見直しにまで踏み込む企業が出てきている。カルビーは2020年7月から業務上支障がない場合は「単身赴任を解除」し、家族の元に戻れることを打ち出した。前出の富士通も「ワークライフシフト」により、全国に散らばっていた単身赴任の社員が続々と家族の元に戻っている。JTBも転勤が命じられても、転居せずリモートワークで勤務ができる制度を導入、2021年9月にNTTグループでも「転勤・単身赴任の原則廃止」を打ち出した。
女性のキャリア支援に必要なのは主体的な働き方だった
これまで日本企業は「女性支援」というと、育児や介護のための短時間勤務制度や育休の延長など、福利厚生として仕事と家庭の両立支援制度を重点的に整備してきた。しかし、それは結果として「マミートラック」と言われるような、育休を取得して復職した女性たちが意図せずキャリアを諦めることにも繋がっていた。日本の多くの職場で「決まった時間に決められた場所で働く」ことが前提で、育児などに合わせて時間を融通することが難しかったからだ。
逆に、コロナを機に働く時間も場所も働き手個人が選べるようになった企業では、副産物として女性たちがキャリアに意欲的になっている。こうした事例を取材すると、さまざまな両立支援制度を充実させる以上に、「自分で働く場所や時間を選べる」「主体的に働き方を選べる」ことが女性のキャリア支援には重要だったことがわかる。
ということは、リモートワークを積極的に導入して運用していこうとする企業と、従来型の「出社マスト」な企業では、女性たちのキャリアにも差が出てくることが予想される。数年後、働き方の変化が女性管理職の比率や男女の賃金格差にどんな影響を及ぼしているのかについても検証する必要があるだろう。