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キャリアを考える上で生まれた新たな「格差」

 一方で、コロナ禍で改めて注目されたのが、感染が拡大する中でも職場に行かなければならないエッセンシャル・ワーカーと言われる人たちの存在だった。医療関係者だけでなく、教師や保育士、介護施設やスーパーなどの流通業で働く人などは、リモートワークの恩恵を受けることができない。むしろこうした働く女性を支えるインフラにもなっているような産業や業種で、子育てなどとの両立に苦労するという現実は依然として残り、企業間や業種間による「オンライン格差」は拡大している。

 さらにもう一つの「格差」もある。リモートワークによって男性も在宅時間が増えたが、それが男性の家事・育児時間の増加につながっていないことも明らかになっている。東京都の調査(2021年度男性の家事・育児等参画状況実態調査報告書)では、家族の在宅時間が増えると家事の総量も増えることがわかったが、2年前の数字と比べると、男女の家事・育児時間差は19分拡大している。コロナ禍でも男性の家事・育児時間は1分しか増えなかったのに対して、女性は20分も増加し、男女差は5時間20分まで拡大している。

 ただ中には夫が在宅勤務になり、以前より積極的に家事や育児を分担してくれるようになったという声も聞く。つまりコロナは夫たちの家事・育児への向き合い方の格差も拡大させている。女性たちがリモートワークによって自由になる時間が増えた一方で家事や育児の負担も増えれば、その効果は相殺されてしまう。企業との関係を見直すだけでなく、家庭内の関係、家事・育児の分担の見直しも進めてこそ、仕事やキャリアを前向きに考えることができるのだ。

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©️iStock.com

 現在、政府は2020年代のできるだけ早期に企業の役員や管理職における女性の割合を30%に、という目標を掲げている。だが、現実は企業内での女性の登用はなかなか進まず、2020年度時点で課長職では10.8%、係長職では18.7%に止まっている(雇用均等基本調査)。さらに今年1月に報じられたNHKの調査(女性管理職など30%程度「早期達成困難」が半数以上 主要100社)によると、100社中53社が2020年代早期の30%は難しいと答えている(6社は必ずしも達成は必要としていないと回答)。

 女性の管理職登用が進まない背景として、経営層や上司からは、「女性自身がやりたがらない」と女性の意欲の問題とされることも多い。だが、果たしてそうなのか。管理職登用が難しいと考えている企業には、リモートワークの全社的な定着が女性たちに及ぼした変化を真剣に受け止めてほしい。