日本から追い出されるのではないか
ブシマキンさんは最近、自身の行く末に不安を持つようになった。
ロシア人が日本に滞在するには法務省の在留許可が必要で、来春には更新時期を迎える。その許可が延長されない恐れが出てきているのだという。
「日本とロシアの関係が悪化している今、在日ロシア人の間では日本から追い出されるのではないかという噂が持ち上がっています。法務省が日本に必要ない人間だと判断すれば、在留許可は出ません。そうなったら、来年の今頃は、私も日本にいないかもしれません」
ブシマキンさんには、能美市でやりたいことが山のようにある。
シェレホフ市との交流では、ようやくオンラインでやり取りできるようになってきた。
以前は両市とも機器が乏しく、ブシマキンさんとシェレホフ市の教員が個人のスマートホンをつないで中学生の交流を行ったような時期もあった。コロナ禍の余波で双方で整備が進み、「これからは行き来できなくても様々な交流ができる」と意気込んでいたが、その矢先の侵攻だった。事態が急変して以降、能美市の国際交流の方針は定まっておらず、今後どのような事業ができるかも不透明だ。
小さな町にもロシアに関する歴史が
また、昨年度はシェレホフ市民に能美市のことをもっと知ってもらおうと、YouTube動画を制作した。平成大合併前の旧3町のうち、旧寺井町を紹介するビデオを撮影したのだ。
寺井は旧北国街道の宿場町として栄え、古い街並みが残っている。地元では街歩きで活性化しようという取り組みが始まっており、これにコラボする形で地域の魅力を発信しようと企画した。
ブシマキンさんがこだわったのは、こうした小さな町にもロシアに関する歴史が残っている点だ。
「明治時代にはロシア貿易をした九谷焼の商人がいました。日露戦争の記念碑が建てられている神社もあります」
今年度は、残る旧根上町と旧辰口町についても紹介動画を制作する予定だが、在留許可が延長されない恐れがあるので、撮影を急がなければならない。