1ページ目から読む
3/5ページ目

ウクライナ人の友達は……

 ロシアではウクライナへの侵攻を「正しい」と支持する人と、「戦争は悪だ」と批判する人との間で亀裂が生じている。「私の友達にも両方の意見があり、ロシア国内では友人関係が崩れて、溝が深まっています」とブシマキンさんは悲しげだ。「在日ロシア人の間でも同じように分断が進んでいます」と話す。

 さらに、「ロシア人とウクライナ人のケンカも激しくなりました」とうなだれる。

「実は今回の戦争はだいぶん前に始まっていました」と、ブシマキンさんは説明する。

ADVERTISEMENT

 2014年にロシアがクリミアを併合して以降、ウクライナ東部は紛争状態に陥った。これが今回の戦争と地続きになっているのだ。それからというもの、日本国内でもロシア人とウクライナ人はケンカをするようになり、今回の侵攻で一段と激しくなったのだという。

能美市からの訪問団に、シェレホフ市から友情の印として贈られた模造刀剣
シェレホフ市からの訪問団には、団員の集合写真入りの九谷焼を贈る

 ブシマキンさんにはウクライナ人の友達もいる。そのうちの1人はロシア軍の侵攻が始まった時、仕事でイギリスに在住していたので無事だったが、むしろ帰国できなくなった。母親は激戦が伝えられたハリコフに残っており、ブシマキンさんは「無事かどうか心配です」と心が落ち着かない。

「戦争は絶対にやってほしくなかった」

 ロシアでは経済制裁による市民生活への影響も出ているという。「アメリカは制裁をしなければ戦争を止められないと言っていますが、ロシア国内では一般市民が苦しんでいます」と話す。

 そうした状況にありながらも、なぜプーチン大統領はウクライナへの侵攻を止めず、ロシア国内には支持する人が多いのか。

 ブシマキンさんは「ロシア人は知らない他人に自分の最後のシャツの1枚まであげてしまう、という昔のことわざがあります。多くの国民が戦争に賛成し、『困っている人を助けなければならない』と言っている背景には、こうした考え方があるからかもしれません」と分析している。

 つまり、親ロ派がいる地区で、親ロ派住民が困っていると伝えられるならば、命を張ってでも助けに行かなければならないと考える風土がロシアにはあるというのだ。

「でも、戦争は絶対にやってほしくなかった。こういう事態になって、すごく悲しいです。ただただ悲しい……」