文春オンライン
「都合がよすぎる」「差別が描かれないのではないか」…朝ドラ『ちむどんどん』SNSでの反響が“賛否両論”のワケ

「都合がよすぎる」「差別が描かれないのではないか」…朝ドラ『ちむどんどん』SNSでの反響が“賛否両論”のワケ

CDB

2022/05/18
note

 東日本大震災から10年、真正面から被災地を舞台にした『おかえりモネ』でさえ、ストーリーの佳境で東北で災害を経験した少年少女たちの苦悩が描かれ、そしてそのやり場のない感情が災害を経験せずに東京でキャリアを積んだ主人公の百音に向けられると、SNSではまるでそれがただの姉妹喧嘩や色恋沙汰であるかのように「言い過ぎ、わがまま」「好きになれない」「主人公に依存している」という批判が溢れた。

「社会問題を描かない朝ドラ」と揶揄する一方で、実際に描けば反発が起き、あるいは「10描くべきなのに8しか描けていない」というさらなる批判が出る。

『ちゅらさん』で愛された「なんくるないさ」の本当の意味

 5月8日の日曜日、今後『ちむどんどん』の舞台となる横浜・鶴見の沖縄タウンを訪れた。鶴見沖縄県人会会館の建物の1階にある沖縄の名品を売る店と、沖縄ソーキそばの店がにぎわっている。観光客向けに店が立ち並ぶ、沖縄一色の商店街ではない。昭和の時代に沖縄出身の労働者たちが集い住み、そこから自然に沖縄のアイデンティティを持つようになった静かな街だ。

ADVERTISEMENT

 だが、電信柱にはひとつずつ、「ハイサイ!ちむどんどんするまち 横浜鶴見」というプレートがつけられ、ガードレールには「ちむどんどんの舞台 横浜鶴見へようこそ」というのぼりが立つ。

 多くの人が知るように、連続テレビ小説には「地域おこし」の側面がある。『なつぞら』であれば北海道十勝。『あまちゃん』なら岩手県。単にモデルになったというだけではなく、ファンの「聖地巡礼」を呼び、お金を落とす経済効果が期待されるのだ。

『ちむどんどん』で「にーにー」役を演じる竜星涼 ©AFLO

 そして沖縄をテーマにした朝ドラとして誰もが思い返すのが沖縄返還30周年を前に作られた『ちゅらさん』だろう。2015年に亡くなった平良とみが演じるおばぁと、劇中のウチナーグチ「なんくるないさ」は本土の視聴者に愛された。だがそれは2013年の琉球新報のコラムによれば本来「まくとぅーそーけー(正しいことを、誠の事をしていれば)、なんくるないさ(なんとかなるさ)」という定型句の後半だけを切り出したものだという。

 NHKの戦争証言アーカイブスでは、平良とみが子どもの時に経験した沖縄戦、そこで見た捕虜の米兵の放心状態の顔を語る映像を今も見ることができる。平良とみはおそらく、沖縄戦の惨禍だけではなく、その後の復帰前後の本土からの苛烈な差別もよく知った上で、朝ドラ視聴者の求める沖縄のおばぁを演じていたのではないかと思う。