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 そこから久保さんは予定通り1ヶ月かけて三国志ゆかりの地を回り、帰国した。そして落ち着いたところで、Mさんに連絡を取ってみた。携帯にかけるのだが、何度かけても繋がらない。勤めていたカメラスタジオの名前も聞いていたので、電話番号を調べて連絡してみた。すると、1ヶ月前から仕事に来ていないと言われてしまった。1ヶ月前といえば、Mさんが上海から帰国した頃だ。

 そして、そこからMさんの消息は未だにつかめないままだという。

やはり“封印”すべきだったのか……

 久保さんは私に「あの時、俺が封印解いても大丈夫って言ったからかな。多分、偶然やと思うけど……」と、自分を責めるような、どこか釈然としないような表情で言った。

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 その話を聞きながら、私はふとあることが気になった。

「もしSさんの言っていたことが正しかったとしたら……、今、この話を俺にした久保さんも危なくない?」

 すると久保さんは何かを考えるように少し黙ってから、「確かに、この話はあんまり人にはせんほうがええかもな」と言った。「でも、不思議と話したくなるんよな」

 その久保さんの表情に、なぜか私は少し寒気を感じた。

 やはり、この話は封印すべきものだったのだろうか――。だが、気づけば私も、こうして彼の話を語りだしてしまっている。