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「あの家族、実はMが殺した?」ピザの配達後に起きた惨劇…“最後の目撃者”が高校時代から口を閉ざし続けた理由

白い手 #2

2022/05/29

genre : ライフ, 社会

『稲川淳二の怪談グランプリ』で優勝経験もある、オカルトコレクターの田中俊行氏が友人から聞いた“奇妙な話”。友人がかつて旅先で出会ったMさんとの記憶は、想像もできない結末へと向かっていきます。その衝撃の実話とは――。(全2回の2回目/前編から続く

◆ ◆ ◆

「昨日は学校終わって、えっと、ピザ屋にバイトに行って……帰りました」

 Mさんが職員室でそう答えると、警察は「Tさん、ご存知ですよね?」と、ある女性の名前を口にした。だが、その名前はMさんにとって聞き覚えのないものだった。

「いやわからないですね」

「大阪府◯◯の✕✕のTさんです」

 その住所を聞いてピンと来た。昨日、ピザの配達で最後に届けたお客様のことだ。確かにTさんという名前だった気がする。そう答えると、警察は配達時の様子を聞いてきた。

昨夜、Tさんの家で起きた事件

「母親らしき人が出てきたのでピザを渡して……、そういえば奥に小さい子供がいましたね」

 そう答えながら、なぜTさんのことについて聞いてくるのか疑問に思ったMさんは、「何かあったんですか」と尋ねた。すると、昨夜、Tさんの家で無理心中があったのだという。

©iStock.com

 Mさんがピザを配達した後、間もなく帰宅した夫がTさんと子供の2人を絞殺、そして自らも部屋で首を吊って亡くなったのだという。犯人は夫だとわかっているものの、Tさんに最後に会ったのがMさんであったため、一応警察が事実関係とアリバイを確認してきたそうだ。

 思わぬ話にショックを受けつつも、警察から解放されたMさんは、今度は先生からバイトのことを咎められ、そして教室に戻った。

「あの家族、実はMが殺したんじゃないのか?」

 それから1週間ほどが経つと、誰にも話していないのに学校には事件の噂が流れ、Mさんは注目の的となっていた。

 はじめは嫌がっていたものの、それまで学校で目立つこともなかったMさんは徐々に気持ちがよくなり、事件の詳細を自ら友人たちに話しはじめたという。そして、事件を茶化すような話までするようになった。