『稲川淳二の怪談グランプリ』で優勝経験もある、オカルトコレクターの田中俊行氏が友人から聞いた“奇妙な話”。友人がかつて旅先で出会ったMさんとの記憶は、想像もできない結末へと向かっていきます。その衝撃の実話とは――。(全2回の1回目/後編に続く)
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これは、私が友人の久保さんから聞いた話だ。
久保さんはカメラマンで、神戸でカメラスタジオを経営している。現在は展覧会や商品撮影の仕事などで大忙しの久保さんだが、彼がまだカメラを勉強していた学生の頃、夏休みを利用して中国を旅した事があった。
昔から久保さんは三国志が好きで、いつか現地に行って所縁の地を回るのが夢だったようだ。まだ学生の身分でお金は無いが、時間はたっぷりある今が好機と、貧乏旅行を覚悟して中国に行くと決めたという。
早速旅に出た久保さんは、まず、神戸から船で上海に渡った。上海では旅の綿密な計画を立てるため、1週間滞在することにして、その後、1ヶ月程かけて三国志の所縁の地を回るつもりだった。
安宿で出会ったMさんという男性
久保さんが上海で泊まったのは安宿だった。いわゆるバックパッカーが泊まるような所で、1泊1000円もしない。
部屋はドミトリーで6人部屋だったが、幸いにも日本人が3人いて、言葉が通じたためすぐに打ち解けた。そのなかでも、久保さんは特に大阪から来たMさんという男性と仲良くなった。
久保さんよりも少し年上のMさんは、大阪でカメラマンのアシスタントをしていた。仕事の休みを利用し、プライベートで昔から興味があった上海の街並みを撮影しに来ていたという。プロのカメラマンを目指す久保さんにとっては仕事の先輩だったが、まるで同年代の友人同士のように会話は弾んだ。