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 しかし、やはり「封印しているから話せない」と言う。それでもしつこく聞くが、Mさんは教えてくれない。そこで久保さんは苦し紛れにこんなことを言った。

「封印してるって、それは日本での事やろ? ここは上海やし、国境超えてるから封印解いてもええんちゃうの?」

 自分で喋っていても適当な話だと思ったが、意外にもMさんは「そういうもんなの?」と、前向きな反応を示した。「そうやで」と久保さんが言うと、Mさんは安心したような表情で話しだした。

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高校時代に体験した“奇妙な話”

 それはMさんが高校時代に体験した話だった。当時、Mさんは学校には内緒でバイクの免許を取得し、ピザ屋でアルバイトをしていた。その日も学校が終わるとアルバイトに行き、そして家に帰った。だが次の日、朝一で職員室に呼び出されてしまった。

「とうとうバイトしてるのがバレたな」と覚悟して職員室に行くと、明らかに先生ではない見知らぬ大人が2人いて、昨日の事について聞いてきた。彼らは警察だった。

「昨日は学校終わって、えっと、ピザ屋にバイトに行って……帰りました」

 そう言うと、警察は「Tさん、ご存知ですよね?」と、ある女性の名前を口にした。だが、その名前はMさんにとって聞き覚えのないものだった。