狩りでもないのに弓矢を持参することは、私たちの世界で言えば最後通告、あるいは宣戦布告とほぼ同義である。軍隊に抗議に行ったときヤノマミの男たちが弓矢を持っていて、部屋の中に入ったあとも(話し合いが室内で行われたとするならば)離さなかったとすれば、ヤノマミは殺し合いも辞さないほど本気だったと言える。
逆に、持っていかなかった、持って部屋には入らなかったとすれば、軍隊側の過剰防衛かまったく別の理由で(ガリンペイロ化した軍隊が最初から殺すつもりだった可能性も捨てきれないと思う)ヤノマミを殺したのだろう。
いずれにせよ、やるせない事件であることに変わりはない。
違法に侵入したガリンペイロが、女性を強姦し殺害
人が死んでいることもやるせないし、ニュースの伝わり方もやるせない。仮に、事件の原因がWi-Fiに関することではなかったとするならば、これほど耳目を集めるニュースになっただろうか。
私たちの社会には、ヤノマミがWi-Fiを使っていることへの違和感があった。そして、そう思ってしまう原因の一部は、明らかに私たちが制作したテレビドキュメンタリーにある。それが、一番やるせない。
ヤノマミ族の渉外団体であるHUTUKARA(ホトカラ。彼らの言葉で“天空”を意味する)が先月「違法に侵入したガリンペイロが先住民保護区で女性を強姦し殺している」と抗議の声明を出した。これに関しても短く触れたい。
違法であろうとなかろうと、侵入者は先住者の土地を奪い、人間を犯し、殺してきた。これまで何度、同じ話を聞いてきたことか。
人口100人ほどの集落に10人を超える混血児が
アワ族という先住民のある村(マラニョン州アルト・トゥリアス集落)に行ったときのことだ。その集落は一番近い街場(人口は1万人ほど)から60㎞ほどのところにあり、乾期であれば陸路で行くことができる。言うなれば、ブラジル社会に組み込まれる寸前の集落だった。
常駐していた政府機関は予算不足から20年前ほど前に撤退。時を同じくして、無許可の伐採人が大勢で入り込むようになった。私が聞いた限り、侵入者の手口はすべて同じだ。彼らは「友好の証」として男たちに酒を勧める。
先住民伝統の酒であろうはずはなく、ピンガなどアルコール度数の高い蒸留酒である。強い酒を飲み慣れていない男たちが次々につぶれていく。その場に女だけが残る。そして、襲われる。連日同じことが繰り返される。未婚の女性もいれば、未成年の女性もいれば、夫がいる女性もいる。何カ月後かに子供が生まれる。先住民と黒人、先住民と白人の混血児が生まれる。私が訪れたのは2017年だが、人口100人ほどの集落には10人を超える混血児がいた。
1990年代まで無許可の伐採会社を経営していた男にも話を聞いたことがある。男はイゾラドが生存する森で、人を使ってマホガニーを伐採していた。男たちが森から戻ってきたとき、口々にこう言った。