サッカー日本代表、そしてJ1通算最多191得点を挙げた得点王として活躍し、2021年12月に現役引退した大久保嘉人さん(39)。イエローカードもJ1歴代最多の104枚と、激しいプレースタイルが持ち味の一方で、セレッソ大阪に所属した2021年春から、小学4年生だった三男、橙利(とうり)君との二人暮らしを始めた。料理や洗濯、キャラ弁まで作ったという“主夫生活”について話を聞いた。(全3回の2回目。#3、#1を読む)
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料理、洗濯、キャラ弁…単身赴任ではじまった主夫生活
――意外といえば、昨年秋に上梓した『俺は主夫。職業、現役Jリーガー』を拝見し、見事な主夫ぶりに驚かされました。
大久保 僕も反響の多さにびっくりです。昨年、古巣のセレッソ大阪に移籍が決まり、単身赴任するつもりでいたのですが、当時9歳の三男、橙利が「僕も行く」と言ってきかない。それで三男との日々の暮らしを時々SNS上にあげていたんですけど、それを見た出版社から本にしないかとオファーをいただいて。
皆さん、びっくりしたみたいですね。ピッチ上で荒々しい僕が、まさか家事をこなし、子育てをしつつ、キャラ弁まで作るとは思っていなかったみたいで。
でも、他の選手からはクレームの山。ベテランストライカーの僕が、料理や洗濯をし、橙利の学校のことまでやっていることを知り、選手の奥さんたちが「大久保さんがこれほどやっているのに、なぜあなたはできないのか」と文句を言われたって(笑)。
――エースストライカーが毎朝6時に起き、息子さんの朝食を作っていたとはにわかに信じられません。
大久保 だって、僕が食事を作って食べさせなければ橙利は死んじゃうんですよ(笑)。父親としては当たり前のことじゃないですか。
朝食は目玉焼きとかそんなに凝った料理はできなかったけど、夕飯は工夫しましたね。一度も同じメニューを出したことはないと思います。それまで料理は妻任せ。自分で作ったことはほぼなかったので、妻に電話して教えてもらったり、ユーチューブを見ながらメニューを考えました。
お陰で魚は捌けるようになったし、煮つけは我ながら上手いと思う。ただ、味付けやメニューは子供向き。アスリートは食事に気を使う人が多いけど、僕はそれ以上に三男が美味しく食べてくれるかどうかの方が大事だった。でも、作ったものはすべて「美味しい」と平らげてくれ、それでまたやる気になるんですよ。
当初は調理器具もそれほど揃っていなかったので、フライパンの蓋は自分の手(笑)。目玉焼きの時は油がパンパン撥ねて手のひらに付くのに、子供に美味しいものを食べさせたいと思うとなぜか熱さを感じない(笑)。
給食がなく弁当持参の日には、ピカチュウのキャラ弁を作りましたね。前日からイメージトレーニングをしておいたので、我ながら短時間でよくできたと思います。サッカーもそうだけどイメージトレーニングは大事。ただ子供が弁当箱を振り回しながら学校に行ったので、いざ食べようとしたら、ピカチュウの顔がぐしゃぐしゃになっていたとか。