サッカー日本代表、そしてJ1通算最多191得点を挙げた得点王として活躍し、2021年12月に現役引退した大久保嘉人さん(39)。最近は、三男・橙利(とうり)君と大阪で2人で暮らし、家事や育児を行った“主夫生活”も話題になった。そして、2022年11月21日に開幕するFIFAワールドカップ・カタール大会。大久保さんが注目する、グループステージからの日本の勝ち上がり方とは。(全3回の3回目。#2、#1を読む)
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強豪とグループステージから戦えるのはラッキー
――W杯の組み合わせが決まりました。W杯2大会出場の大久保さんはドイツ、スペイン、コスタリカかニュージーランド、そして日本のE組をどう見ていますか。
大久保 テレビの仕事で抽選会は生中継で見ていたんですけど、ドイツやスペインが入ったE組に日本も入れ、入れと願っていたら本当になった(笑)。
ドイツは2014年W杯ブラジル大会の優勝国だし、スペインは2010年南ア大会の優勝国。今まで日本はこんな強いグループに入ったことがなかった。ベスト8以上にならないと戦えない相手に、グループステージから相まみえることができるんですよ。選手にとってこんなラッキーなことってないじゃないですか。
だから、日本代表の候補選手たちはもうワクワクしていると思いますよ。
――でも下馬評では「2強2弱」と言われ、2位以内に入らないと決勝トーナメントには進めない。日本にとってはかなり厳しい組み合わせです。
大久保 いや、その固定観念が実は絶好のチャンスにもなるんです。ドイツやスペインは勝って当たり前と目されている。一方の日本は突破が難しいと。だからこそ、ドイツやスペインは勝って当然というプレッシャーがかかるし、日本は怖いものがないから伸び伸び戦える。そのメンタルの差は大きいと思います。
事実、14年の優勝国であるドイツは18年のロシア大会ではグループリーグで敗退していますからね。しかも同じアジアの韓国にも2‐0で負けている。
僕は日本が勝ち上がるには、初戦のドイツ戦がカギだと思っています。ただ今のドイツ代表は強いですよ。体もデカいし。一時、前(FW)が弱いと言われていたけど、昨年8月に新監督に変わってからは、すぐに修正され一挙に強くなりましたね。今のドイツの前の破壊力は凄い。
そんなドイツに勝つには守備がカギだと思う。粘って粘って防御すれば、性格がきっちりしプラン通りに進めようとするドイツ人は、途中から焦ってイライラしてくるはず。早く点を取らないと前大会と同じような展開になってしまうという焦りが生まれたところで、日本は一発カウンターを狙う。