33歳で結婚し、34歳から不妊治療をはじめた牧村さん。だが、なかなか上手く進まない治療の身体的・精神的なダメージに加えて、重くのしかかったのは金銭面での負担だった。そんな様々な要因もあり、牧村さんは一度は治療の存続を諦めることにした。

 だが、そんな彼女は昨年から治療を再開したという。精神的・肉体的な辛さは変わらずあったものの、4月からの“大きな変化”により継続を決め、いまも治療に取り組んでいる。(#1から続く)

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 6年前に不妊治療をやめてから、30代後半となった頃には「もうこのまま子供のいない人生だろうな」と漠然と考えていた。

 結婚はしているが「産まない」と決めた40代の人の話を聞いたりもして、「私もそうなるのだろうな」と思うようになった。でも心のどこかではまだ「いつか妊娠するのではないか?」と考えていたように思う。けれどそんなことは一切なかった。

なぜ自分には子供ができないのか?

「まあでも、もうしかたないか……」

 そんな風に思っていた。

 しかし、結婚5年以上経っても子供がいなかった同級生と久しぶりに連絡を取ったら「子供が生まれた」と言われたり、身近でバリバリ働いている女性が第2子を妊娠したりして、モヤモヤが大きくなってきた。

 それは子供が欲しいというよりは、「ほとんどの人ができている(ように見える)ことが、なぜ自分にはできないのか?」という気持ちだった。このまま子供ができないまま一生を終えるのか――? モヤモヤが募り、もう一度不妊治療外来に行こうと決めた。

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もう時間もそんなにないと思うので……

 治療をやめた時と比べれば、転職して給料も倍程度になり、とりあえず以前のように超シビアにお金の心配はしなくていい。しかし、年齢はすでに40歳になっていた。

 前回治療をしてからかなり時間が経っていたので、一通り同じ検査をすることになった。卵管造影剤の検査は相変わらず痛い。でも排卵は毎回正常にしているようだ。今回は卵子と精子の遺伝子検査もしたが、やはり異常なし。

 ただし、検査も自費なのでここまでですでに10万円近く支払っている。結局、「原因不明不妊」という診断がついた。

 先生からは「タイミング法、人工授精もあるけれどどうしますか?」と聞かれ、「もう時間もそんなにないと思うので、体外受精からお願いします」と話すと、先生も同意。40歳から不妊治療を始めるという人も多いらしく、43歳になると妊娠率が急激に下がるため、都道府県からの助成金の対象となる年齢も43歳未満だということを教えられた。

 体外授精は、まず卵子を体内で育て、じゅうぶんに育ったら卵子を体内から取り出し、体外で精子と受精させて受精卵をつくり、それを体内に戻すという流れだ。生理が始まったタイミングぐらいで、まずホルモンを投与して卵子を育てる。だが、それには自己注射、つまり自分で薬剤を注射しなければいけない。