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《保険適用範囲が拡大》45万円が10万円に……?「なんで早く保険適用にしてくれなかったのか」 体外受精を経験した40代女性が語る“不妊治療のリアルと課題”

「不妊治療」は変わるのか #2

2022/05/20
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保険適用後の治療で提示された金額は……?

 基本的な流れは同じだが、採卵前に排卵を抑えるために飲んでいた飲み薬や坐薬が使えなくなり、すべて注射となったのが最もきつかった。1回に2つの注射をするのが3日間も続くと、お腹の傷がさすがに気になり、暗い気分になった。針の刺しどころが悪いと内出血のようになってしまうことがあり、鏡を見るたびに悲しい気分になった。ただ、保険適用の威力はしっかりとあり、毎回2万ほど払っていた診察料が6000円~7000円になった。これは精神的にだいぶ負担を軽くしてくれた。

 そういっためんどうくさい、痛い想いを乗り越えて、再度迎えた採卵日。相変わらず痛いが、看護師さんと話している方が気が紛れるということもわかり、努めて話すようにしていた。たぶん「この人痛くないのかな」と思われていたに違いないが、しっかりと痛かった。

 安静の後、診察を受けると今回も卵子は5つとれたと告げられた。そして……懸念の会計へと向かう。

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 提示された金額は「10030円」。えっ? どういうこと??? と、思わず目を疑った。なんなら1桁間違えているのではないかと確認したが、間違いなく1万円だった。どういうことなんだ……。前回とはまた別のモヤつきを抱えながら家に帰り、しっかりと体を休めた。

 そしてまた2週間後。ここで今回も受精卵がダメでしたと言われたら、もうスッパリと不妊治療はやめようと心に決めて病院に向かった。だが予想に反して、今回は5つすべての受精卵が正常に分割しました、と告げられる。ここから今度は着床に向けてやっていくとのことで、生理を起こすために薬を飲み、また3週間後に来てくださいと言われる。正常に分割してよかった、という気持ちと、まだ続くのか、という気持ちがごっちゃになる。

 この日の会計では6万円ほど支払った。明細を見てわかったが、自費診療の時は「採卵」と「受精卵・胚培養」が一緒くたになっていたが、保険適用の場合だと「採卵」と「受精卵・胚培養」が別々のタイミングで請求されていた。