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《保険適用範囲が拡大》45万円が10万円に……?「なんで早く保険適用にしてくれなかったのか」 体外受精を経験した40代女性が語る“不妊治療のリアルと課題”

「不妊治療」は変わるのか #2

2022/05/20

 しかし、卵巣に針を刺しているので、本当に、本当に痛い。どれぐらい痛いかというと、生理痛のひどいときの10倍ぐらい痛い、というイメージ。私は痛くても「痛いです」とか言うぐらいで、あまり声を出さないタイプなのだが、泣き叫んだりする人もいるそうだ。

 終わった後は30分ほど安静にして、診察を受けたら解放される。

会計でさらっと提示された「36万円」という領収書

 診察では、採卵の結果5個の卵子が取れたこと、ここから受精卵を育てるので2週間後に診察に来るようにと先生の話。「年齢を考えるともう1回採卵してもいいかも」とも言われ、この作業をまた繰り返すのかとゾッとした。そして会計のために受付に行き、さらっと「36万円です」と提示される領収書。自分の40歳の記念にと、迷いに迷って買ったバッグよりも高い。

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 ここに通っている人たちはみんなこんなことをしているのかと思ったら、クラクラしてくる。体にも金銭的にもダメージが大きすぎ、その日は何もする気になれなかった。体に確実に負担がかかっていたのは間違いなく、次の日は微熱が出てまる1日引かなかった。

 そして2週間後に診察を受けに行き、「今回は5つとも受精したけど、全部分割がうまくいかなかったので、使える受精卵は一つもなかった」と言われた。え? あれだけ時間と肉体的負担と金銭的負担をかけて何もなし? いや、ちょっとありえない。病院側は、「不妊治療しているんだからこういうことはありうる」「お金がかかるのも納得しているんでしょ」的なスタンスなのも納得がいかなかった。

今年の4月からは不妊治療が保険適用に

 ダメだったのでまあ次行きましょう。次生理になったらまた予約をとってください。そう言われても「さすがにこれは無理だわ」と思い、生理になったタイミングでも病院に連絡をしなかった。即座に同じことを繰り返し、何十万も払う気には一切なれなかったのだ。

 しかし、今年の4月から不妊治療が保険適用となることは知っていた。なので、もしやってみるならここだ、という思いがあった。

 1か月のブランクがあり、ちょうど4月1日に生理が来てその日に病院を予約。病院側も保険適用の範囲内でやってみましょうということで、再度採卵のための準備が始まった。今までは自費診療という形だったので、病院が治療法も薬も自由に選べた状態だったが、保険適用となったことで使える薬が制限されたり、採血検査も月3回までとなったりと、いろいろと勝手が変わった。先生もかなり戸惑い、試行錯誤しながらという感じが見て取れた。