商品紹介が商品そのものに書いてあるデザイン
中武 少々複雑なのですが、厳密に言うと正式な商品名は『色褪せ知らずの黒 ストレートパンツ』、『ありえねぇ情熱価格 ゴロゲー ゲーミングビーズマットレス』です。つまり、「洗濯80回実証!!洗っても洗っても~」や「人はまだまだダメになれる~」の部分は、いわゆるキャッチコピーに相当する文章ということになりますね。
ただ、確かに商品パッケージには、あたかもすごく長い商品名かのように記載しています。一見長すぎて混乱されるかもしれませんが、我々は商品パッケージを紙面に見立てているんです。ですからこういった商品名は社内で“ニュース”と呼んでいるんですよ。要するに、パッケージに「こういう商品なんです」とか「これを使えばこんなメリットがあります」とか、商品の自己紹介をそのまま書いてしまっているんです。
ドンキの店舗には商品を手に取って説明する販売員がほぼいないので、これまでは手書きのPOPを使って商品紹介をしてきたのですが、それが商品そのものにも書いてあればよりわかりやすいんじゃない? という発想から始まったのがこのデザインです。
“80回洗っても色落ちしない”
――ただのウケ狙いではなく、商品の特徴やウリを的確に消費者に届けたいという想いが根底にあったということですね。
中武 はい、おっしゃるとおりです。例えば、正式名称『色褪せ知らずの黒 ストレートパンツ』という商品を紹介するときに、開発担当者が一番お伝えしたいのは、“80回洗っても色落ちしないこと”です。せっかく商品を手に取ってくれた人がいても、80回実証していること、それほど色落ちしにくいことがお客様に伝えられなければ、「どうせ一般的な黒いパンツと同じなんでしょ」と購入を見送られてしまうことだって考えられます。
だから我々は「洗濯80回実証!!洗っても洗っても洗っても洗っても洗っても洗っても洗っても洗っても洗っても全っ然色落ちしない!!ホコリがつきにくい素材で黒が映える!色褪せ知らずの黒ストレートパンツ」と、その商品の売りが一目でわかるキャッチコピーも、まるで商品名のようにパッケージに載せることにしているのです。
先ほどの『にんにく入れすぎ 激辛ペペロンチーノ 大盛り』でも同じことが言えますね。にんにくのパンチが効いていそうな商品写真をパッケージにしても、それだけではどれだけ凄いのかをお伝えしきれず、購入には繋がらないこともあるでしょう。ですから、どうやったら伝わるのかを考えあぐねた結果、このような長すぎる商品名が誕生したんです。
(文=あかいあおい〈A4studio〉、撮影=平松市聖/文藝春秋)
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