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 ただ、円安に不安を抱く人も多いでしょう。とくに気がかりなのは、家計の圧迫です。折からのガソリン価格や小麦価格の高騰にこの円安が重なり、輸入品の値上がりを心配する人も増えています。

 今後、円はどうなるのか。なぜ日銀は円安を続けるのか。円安に打つ手はないのか。円高になる日は来るのか、来るとすればどのタイミングなのか――こうした疑問について、かつて大蔵省(現・財務省)財務官として為替政策にかかわった立場から、お話ししたいと思います。

円安のメリットがなくなった

 今回の円安について、鈴木俊一財務大臣は「どちらかというと悪い円安」と表現しました。では、「悪い円安」になっているのはなぜでしょうか。

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 日本は戦後、原材料を輸入して加工して輸出する「貿易立国」として経済成長を遂げてきました。そのため「輸出を促進する円安のほうが日本経済にプラス」という認識が長らく共有されてきました。円安であれば、日本からの輸出品の価格はドル換算ベースで安くなるため、価格競争で優位に立てるからです。

 ところがこの20年、経済のグローバル化が進み、輸出企業の多くが消費市場に近い海外に製造拠点を移しました。現地で原材料を調達し、現地で加工して現地で販売する。そうしたグローバル企業にとっては、円安のメリットはありません。

 国内に生産拠点を残している企業でも、全部が円安でメリットを享受できるわけではありません。なぜなら原材料の輸入価格が上がるためです。体力のある輸出企業ならば、販売価格も押し上げられるため、コスト上昇分を輸出価格の増分と相殺できます。一方、輸出をしていない中小企業は、コストが増えるだけなので、円安の恩恵を受けられません。

「安い円」は本当にプラスなのか? ©iStock.com

 しかも、もともと原油高基調であったところにロシアのウクライナ侵略が重なり、天然ガスの供給も不足気味となり、エネルギー価格が全面高となっています。それに加えて円安となれば、ダブルパンチです。

 いずれにせよ、これだけ経済がグローバル化して企業が海外に出てしまうと、円安のメリットよりもデメリットの方が感じられてしまうのは、当然の帰結です。

「為替介入」はできないのか?

 では、この円安に対して、打つ手はあるのでしょうか。

 為替市場で急激な変動を抑えるため、各国の通貨当局が自国通貨を売ったり買ったりする「為替介入」が行われることがあります。為替介入は財務大臣の権限で行われ、日銀が大臣の代理として、その指示に基づいて売買の実務的なオペレーションを担うことになっています。