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「10年以上前に住んでいた渋谷区のアパートは5万円以下の格安物件。引っ越し初日にねずみが出た。すぐ大家に連絡して対応してもらったが、筒のようなもので穴をふさぐだけの応急処置だったので、またすぐにねずみの大運動会がスタート。その状況で4年ほど住み続けた」(38歳・男性)

破格のシェアハウスに住み、体に異変が

 岡田俊之さん(仮名・27歳)が4年前に住んでいたのは、家賃光熱費込み4万8000円という破格のシェアハウス。新宿区にあり、交通の便もいいが衛生観念が“アウト気味”だったそう。

「その家の魅力は安さ以外になかったですね。キッチンもシャワールームも共用で、週に1回はオーナーが共用部を掃除しているはずなんですけど、シャワールームの排水溝には常に髪の毛がたくさん溜まっていて、まあ不潔でしたね」

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 彼のほかにも数名の住人がおり、4人家族が住んでいる広めの部屋もあったという。そんな環境下で1カ月ほど生活すると、岡田さんの体に異変が……。

「熱もないのに、ずっと咳が止まらなくなってしまったんです。仕事中もゲホゲホしていて、同僚から病院に行くよう勧められました。でも、病院でも原因がわからず、咳止めを処方されただけ。今のようなコロナ禍だったら、おおごとになっていたかもしれないです」

 その後も原因不明の咳はつづき、病院を変えようか悩んでいた頃、シェアハウス内の改修工事がはじまったという。改修に合わせて、彼の部屋の壁紙貼り替えが決まった。

「人が住んでるのに壁紙を替えるなんて、そんなこともあるのか、と、壁紙剥がしに立ち会いました。それで、業者が壁紙を剥がしたら、壁にはびっちりとカビが生えてたんですよ……」

 彼の咳との因果関係は不明だが、無数のカビを見て「いくら家賃が安くても、人が住める場所ではない」と感じた岡田さんは退去を決意。その後、咳の症状はおさまったという。

「節約のために安い物件に住みましたが、結果的に引越し費用がかかったり、医療費がかかったりして、本末転倒でした。もちろんなかには、安くても快適に住める掘り出し物件もあるのかもしれませんが、見つけ出すのはかなり難しいのでは」

 あばら家でも“住めば都”になればいいが、ヤバい物件に住んでしまったときの精神的・身体的ダメージは大きい。失うものの大きさを考えると、賃貸といえど、家は慎重に選ばなければならないのはたしかだ。