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「陰陽師」は興行収入30億円を超えるヒットとなり、萬斎はスポーツ紙の映画担当記者の投票で決まる「ブルーリボン賞」の「主演男優賞」のほか、「日本アカデミー賞」では「新人俳優賞」と「優秀主演男優賞」の2冠に輝いた。 

「あぐり」から「陰陽師」に掛けての萬斎の年齢は、31から35歳。万作は萬斎について「20、30の頃、とても花がありました。時の花とはこういうものかなと、親でさえも思いました。花のある狂言師だった」と回想している(『人間国宝野村万作の世界』林和利、明治書院)。 

野村萬斎が演じた役の数々

「陰陽師」の後、萬斎は5本の映画に出演するが、いずれも主演を務めている。 

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 平成15(2003)年、前作のヒットを受け、「陰陽師Ⅱ」が制作された。この作品では、朝廷を滅亡させようとする出雲族の生き残りの術師に扮した中井貴一を敵役に、前作に引き続き安倍晴明を好演した。 

 平成24(2012)年、「のぼうの城」で佐藤浩市と共演。和田竜が、脚本家の登竜門である「城戸賞」を受賞した「忍ぶの城」を映画化した作品で、CMディレクターから映画に進出した犬童一心と樋口真嗣が共同で監督した。身分を超えて領民と交わり、「(でく)のぼう様」と慕われる武将・成田長親は、豊臣方の石田三成軍を前に籠城せざるを得なくなるものの、命懸けの奇策と人望で持ち堪えるという粗筋だ。

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 萬斎は長親、佐藤浩市は幼馴染で重臣の正木丹波守利英を演じた。当初は平成23(2011)年9月に公開を予定していたが、「水攻め」のシーンがあり、この年の3月に起こった東日本大震災による津波を連想させることから、翌年11月まで公開が延期された。興行収入28億円を超えるヒットとなり、「日本アカデミー賞」で作品賞など十部門の「優秀賞」を獲得。萬斎も「優秀主演男優賞」に輝いた。

 平成25(2013)年に公開された宮崎駿監督のアニメーション映画「風立ちぬ」では声優にも挑戦した。ゼロ戦の設計者である堀越二郎の半生をモデルに、堀辰雄の名著「風立ちぬ」を織り交ぜ、生きることの大切さを説いた作品だ。

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 萬斎は、堀越の夢の中に現れた尊敬するイタリアの飛行機設計家・カプローニ伯爵の声で出演した。この作品は約120億円という興行収入を上げただけでなく、アメリカのアカデミー賞長編アニメーション映画賞、ゴールデングローブ賞外国語映画賞にノミネートされるなど、世界的に高い評価を得た。

 テレビドラマでは、平成27(2015)年からフジテレビ系で、アガサ・クリスティー原作×三谷幸喜脚本×野村萬斎主演の組み合わせでスペシャルドラマが始まった。名探偵ポアロをモデルとした主人公「勝呂武尊(すぐろたける)」を萬斎が演じ、物語の舞台を日本に置き換えた。

 名作「オリエント急行の殺人」を原作とする「オリエント急行殺人事件」を皮切りに、平成30(2018)年には「アクロイド殺し」を原作とする「黒井戸殺し」、令和3(2021)年には同名の作品を原作とする「死との約束」が放送された。