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歩行者や自転車も「加害者」に

 車やバイク相手の事故では「被害者」となりやすい自転車だが、歩行者や同じ自転車相手の事故では「加害者」となる可能性も大いに考えられる。

「一般社団法人 日本損害保険協会」の発行する自転車向けの安全啓発パンフレットには、自転車による加害事故の現状が紹介されている。掲載事例のうちには、小学生や高校生の乗る自転車が歩行者に重傷を負わせ、1億円近い賠償金支払いが命じられたケースもある。

 さらに「交通弱者」とされる歩行者も、必ずしも「被害者」の立場に置かれるわけではない。

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 2019年には赤信号を無視した歩行者とバイクが衝突し、バイク側の運転者が死亡した事故があった。歩行者は重過失致死の容疑で書類送検され、後に不起訴となっている。

 損保会社スタッフは、「歩行者と自動車の事故でも、車側が青信号で、歩行者側が赤信号を無視した場合には70:30で歩行者側の過失が大きくなります」と話す。さらに、夜間や幹線道路など、自動車側の対処が困難な条件が重なれば、歩行者側の過失が加算されることも考えられるという。

 どの移動手段を利用していようと、誰もが事故の加害者になりうる。さらに今後、免許なしで運転可能な時速20km以下の電動キックボードが普及すれば、いっそう多様な交通主体が公道で交錯することになる。教育機関や家庭における交通教育の徹底とともに、個々の交通主体が「他の交通主体からどう映っているか」を意識していくことが肝要だ。