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雨を降らせる悪魔の石は幻術師の継承の証
高木 物語のキーになる悪魔の石に関しては、ジャダ石という、当時モンゴル・トルコ系諸民族のシャマンが風雨を起こす魔術に使用していた石も意識しているんじゃないでしょうか。
じつはこれ、牛や馬の結石なんだけれど。『元朝秘史』のなかでも、シャマンがこの魔術を使っているんです。
蔵西 じゃあ、やっぱり、最後のシーンでナンがアッサムの悪魔の石を持つのは、幻術師としての「継承」として描いても正解だったということですね。
高木 それはすごくおもしろいと思いますよ。動物の結石は、西アジアでも薬などとして、使われていたので、幻術師のような人たちが持っていてもおかしくない。
ラストのシーンでは、テヘランの博物館に、この石がありますね。
蔵西 もちろん本当は置かれていないですけど(笑)。こういうところも司馬先生は演出がニクいです。本当にあると思っている読者も多いんじゃないかな。
そういえば、ラストの博物館を描く現代の場面で、「外国人観光客の女性が髪を隠していない」こともご指摘をいただいて直したんです。やっぱり現地にいけないと感覚がわからないこともありました。