伊丹十三必読の6冊
1『再び女たちよ!』
雑誌『ミセス』連載のエッセイ集。「女とはなにか?」から始まるまえがきで垣間見える女性観や、浴衣姿の少女を呼び出す「花火」での少女への接し方が興味深い。「流れゆく女友だち」では女性への偏見がチラリ。過渡期にある30代の伊丹が楽しめる。
2『女たちよ! 男たちよ! 子供たちよ!』
伊丹のフェミニズムの蕾が育児によって開いたことがわかる一冊。ワンオペの一日を綴る「知的生活者諸君!」、1歳4ヶ月の次男と向き合う「夜泣き」など育児あるある多数。後半の育児論の鼎談はあまりピンとこないけど田原節子との巻頭対談は最高。
3『日本世間噺大系』
伊丹の得意技のひとつ「聞き書き」を活かして世間話を集めた一冊。絶対読むべきなのは「生理座談会」! 4人の人妻がそれぞれの生理について語り合います。こういうテーマでしゃしゃり出るのではなく聞き書きという手法を取る伊丹、信頼できる。
4『モノンクル ボクのおじさん』創刊2号
精神分析をテーマにした、伊丹十三責任編集の雑誌。No.2では表紙に〈「いい女」なんていわないでね「いい女」じゃない私はどうしたらいいの?〉の見出しを入れ、巻頭で「レイプされてしまったときの処置」を紹介。伊丹フェミニズムここに炸裂!
5『ぼくの伯父さん』
没後20年に刊行された単行本未収録エッセイ集。スウェーデンと日本の性教育のあまりの落差に怒りが湧きむせび泣く「怒りの旅」、子どもとポルノと性教育についてユーモアたっぷりに綴る「犬の毛皮」など、大人はもちろん思春期の子どもにも薦めたい名作多数。
6『フランス料理を私と』
珍本の誉れ高い本作。伊丹十三がゲストの家の台所でシェフの指導のもとフランス料理を作り、それをゲストにもてなしながら対談をする構成。シャドーワークなどのジェンダー論の合間にメインディッシュの説明が挟まるカオス! 文藝春秋でのオールカラー連載を書籍化。
【筆者プロフィール】
瀧波ユカリ/Yukari Takinami 漫画家
1980年北海道生まれ。漫画に『臨死!! 江古田ちゃん』『モトカレマニア』(ともに講談社)、コミックエッセイに『はるまき日記』(文春文庫)、『オヤジかるた 女子から贈る、飴と鞭。』『ありがとうって言えたなら』(ともに文藝春秋)など。現在は『私たちは無痛恋愛がしたい』をウェブ漫画マガジン「&Sofa」(講談社)にて連載中。
【週刊文春WOMAN 目次】小室佳代さん密着取材一年 小誌記者に語った息子の子育て、金銭トラブル、眞子さまへの尊敬/特集ジェンダー&フェミニズム/香取慎吾表紙画第10弾
2021年 夏号
2021年6月22日 発売
定価550円(税込)