露出度の高い女性の萌えキャラが、キャンペーンのポスターやCM、テレビ番組などの公の場に出る時は、TPOをわきまえて「一枚羽織る」べきなのか。

 2020年12月5日(土)に開催されたオンラインイベント『シン・これからの「フェミニズム」を考える白熱討論会(#シンこれフェミ)』では、この問いをめぐって、ネット論客とフェミニストの間で議論が行われた。

相次ぐ「萌えキャラ」炎上

 ここ数年、「性差別的な表現」であるとみなされた企業のCMやポスター、自治体のキャンペーンがSNS上で炎上する事件が頻繁に起こっている。

ADVERTISEMENT

 その中でも、いわゆる「萌えキャラ」に関する論争は、「女性の身体を過度に性的に描いた表現を、公の場に出すことが許せない」という人たちと、「萌え絵に難癖をつけて炎上させ、表現の自由を侵害しようとするフェミニストが許せない」という人たちの間で激しい対立が生じている。議論という次元を超えて、意見の異なる相手に対する誹謗中傷やデマの拡散、ネットリンチのような状況に至ってしまうケースも増えてきている。

©iStock.com

 今回のイベントは、こうした状況に歯止めをかけるため、両者の対話の場を作ることを目指して開催された。

 ゲストは、表現の自由を重んじる立場に立つネット論客の青識亜論(せいしき・あろん)さん、そしてポストフェミニズムという視点から若い世代の性別役割分業や性行動の意識調査、SNSにおけるハッシュタグ・ムーブメントなどの分析をされている研究者でフェミニストの高橋幸(たかはし・ゆき)さん。私はイベントの主催者兼司会として、進行役を務めた。

「傷ついているのは女性だけではない」

「萌えキャラに一枚羽織らせる」ことは、表現の自由を守りたい人たちからすれば、キャラクターや作品の世界観を破壊する表現規制に他ならない。公の場に出ている萌えキャラを見ることで、「自分たちの好きなものが公に認めてもらえた」と感じているオタクにとっても、許せないものになる。

 こうした点を踏まえて、青識さんは「そもそも、萌えキャラが自治体や公共団体のキャンペーンに起用される背景には、その自治体が作品の舞台であるという文脈や、ファンとのつながりなどの歴史がある。そうした文脈や歴史を無視して、『性差別』という言葉で一方的に批判して炎上させることに意味があるとは思えない」「自分の好きな作品や表現を炎上させられるということが、受傷を伴う主観的経験=『傷つき』であることを知ってほしい」「傷ついているのは女性だけではない。オタクもまた、被害者である」と主張した。