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スパイのまま国家元首に

 00年の大統領就任以降、“独裁者”として君臨してきたプーチン。20年には憲法改正により自身の大統領任期を2036年まで可能にするなど、長期政権に向けた体制を盤石にしていた。こうした姿と重なるのが、中国の習近平国家主席だ。習主席も18年に国家主席の任期制限(2期10年)を撤廃。長期政権を可能にした。

習近平国家主席

 歴史を俯瞰してみると、いまのロシアと中国には共通する特徴があります。かつては絶対的な権力と広大な領土を誇る巨大な帝国だったのに、現代ではすっかり小さく萎んでしまった。そんなときに、長期政権を敷く“独裁者”が現れた、という状況です。

 同じ境遇の2人は、目指す国家像もきわめて近い。それは、巨大な帝国だった時代の栄光よ、再び――というものです。

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 習主席は「中華民族の偉大な復興」をスローガンに掲げています。念頭にあるのは、漢民族の国家だった明の時代。当時、コロンブスらの時代より100年近くも前に、鄭和(ていわ)という人物が大船団を組んで南シナ海を開発したことを根拠に「南シナ海は明の時代から中国のものだった」という主張もしている。

 プーチン大統領の場合は帝政ロシアです。今回の侵攻についても「ウクライナはもともと帝政ロシアのものだったではないか」という本音がチラつきます。

スパイになった者は、死ぬまでスパイ

 この観点で世界を見渡してみると、もう一人、肩を並べる“独裁者”がいます。トルコのエルドアン大統領です。トルコもかつては巨大なオスマン帝国でした。14年に大統領に就任したエルドアン氏はいま、式典の際に、オスマン帝国時代の正装をした兵隊を並べます。彼も「オスマン帝国の栄光よ、再び」と思っているに違いありません。

トルコのエルドアン大統領

 ただし、習主席とプーチン大統領で、決定的に違う点もあります。

 習主席は、中国共産党で能力を発揮し、実力で出世してトップに上り詰めた。一方でプーチン大統領の出発点は、KGBの中でも東独のドレスデン支局。エリートコースであるベルリンではなかったことからも、じつはスパイとしては凡庸だったと想像がつきます。しかし、彼はスパイとして磨いた「人たらし力」で当時のエリツィン大統領の懐に飛び込み、後継者となった。仕事の能力ではなく、人の心を掴む力でトップにのし上がったのです。

 プーチン大統領が好んで使う言葉に「“元スパイ”は存在しない」というものがあります。スパイになった者は、死ぬまでスパイ。つまり彼自身、スパイのまま国家元首になったのです。そして、スパイ特有の「人たらし力」を駆使して懐柔したのが、米国のトランプ前大統領であり、安倍晋三元首相だったのかもしれません。

 今回の戦争は、世界史の新たな転換点となりました。プーチン大統領は、未曽有の暴挙を働いた人物として、歴史に名を刻まれることになるでしょう。