「子どもに過剰に思い入れを持たないようにしているんです」
――それでも写真を撮ることで親も冷静になれるし、お子さんも泣いていた自分のことを客観的に見られるんですね。
三輪 後で写真を見ながら「これはなんで泣いていたの」って聞くと、子どもも夫も忘れているんですよ。だからそこまで深刻な問題ではないんです。そんなすぐ忘れるようなことで殴るなんて、バカバカしくないですか。
――そうですよね。写真で残しておけば、これもむしろいい思い出だねという笑い話になりそうです。現代的な子育てですし、殴ったり怒鳴ったりするより合理的です。
三輪 親自身がイラッとしたことさえ、忘れているということですからね。
――世の親が子どもにイラッとしたり厳しく管理したりするのは、ある種の「期待」だと思うんです。その点、三輪さんはわが子に「何者になってほしい」という期待を全然持たないと公言されていますが、それはどういうことなんでしょう?
三輪 私は子どもに過剰に思い入れを持たないようにしているんです。だから、息子の名前も自分でつけず、夫の師匠(小説家の白石一文氏)の名前をいただきました。自分が子どもへの期待で埋め尽くされる「期待おばけ」になるのが本当にイヤなんですよね。
――三輪さんがおっしゃるように「子どもをコントロールしようとしても目的どおりに実現するものではない」と考えると、「期待おばけ」になるのは虚しい気がします。とはいえ最低限の希望とか、逆にこうはなってほしくないというような願いくらいはありそうですが。
三輪 なんだろう……。「自分の収入以上にお金を使わない」とか、「人に暴力を振るわない」「人のものを盗まない」とか、その程度ですね。あとは「人を追い込まない」。もしかすると「人に期待しない人になってほしい」ということかもしれませんね。奇しくも夫が「タモリ論」でタモリさんを評した言葉のようです。
――そのうえで、子どもがどう育つかは子ども次第であると。
三輪 そう思います。親が子どものためにできることがあるとしたら、いちばん大事なのは夫婦仲がいいことなんじゃないかと思っています。これは弁護士としての経験や、司法浪人時代にやっていた家庭教師の経験から自信を持って言えます。夫婦がきちんとコミュニケーションをとって仲良くしている家の子どもは、そんなに困ったことにはならないんじゃないかと。
――叩いたり怒鳴ったりするよりも、よほど大事ということですね。
三輪 逆に言えば、仲良くできないなら離婚した方がいいと思うこともあります。両親がいがみあっている姿を見せ続けるより、前向きな選択です。
――なるほど。子どものためにと離婚を思いとどまるのは、実は子どものためにならないと。もし悩んでいる人がいたら、三輪さんのような弁護士に相談するのもひとつの手ですね。