「あの3連戦見たら誰もボスを『パフォーマンスだけ』なんて言わないでしょう」
――まだミスして泣いて、新庄ビッグボスから「泣き虫集団」って言われたりしたけど、ひたむきにやってることが形になってきましたよね。それがいちばん出たのが神宮のヤクルト3連戦じゃなかったかと思います。どうですか、びっくりしなかった?
「聞かれると思ってメモを持ってきたんですけど、初戦からまさかあんな試合になるなんて考えてもなくて……。正直、ここまで踏ん張って、追いつめて、また踏ん張ってみたいな力をいつつけたんだろうなって思ってるんです。手帳をやってる身としては延長はつらいんですね。どっちに転ぶかわからない、どれが決定打になるかわからない試合は最後の最後まで構成が決められない。終わったの10時過ぎで、サヨナラで……、手帳いったんパタンと閉じるんですけど、不思議と構成のイメージがパッと浮かんでました」
――2夜連続のサヨナラ負けです。同じ投手がサヨナラ被弾したケースとしては星野仙一以来、44年ぶりってことですね。ファンとしては最悪でしょう。くたくたになってホントに酷い結末。だけど、同時に野球の奥深さにしびれてもいるんだよね。
「負けたときの手帳って……、一応去年と今年のデータを出してみたんですけど、負けた試合どうしを比べて、どんなポリーを描いてきたかってちょっと出してみたんです」
――あー、ななつぼしさんは自分ルールが厳密にあって、負け試合のときは写真コラージュじゃなくポリーのイラストにするんだよね。
「負け試合なんでボヤいたり怒ったりがほとんどなんですけど、そのなかでもわりとポジティブ要素で描いてる日もあったりして。で、去年68敗してるうちでポジティブ系、励まし系が13回あったんです。で、それを打率に直すと1割9分1厘だった。でも今年は負けても励まし系、明るい系が多くて、30敗12ポジの打率4割に上がってるんです(5月27日現在)」
――あぁ、「100敗する」って言われたり「連続サヨナラ被弾」食らったりしたけど。
「打率上がってるんですよ。負けても面白かったってことですよね、毎試合何か発見があった。それがあの神宮につながるのかなって……」
――そうか、去年の負けた試合って貧打、無援護、エラーが続出したり走塁を怠ったり、言っちゃ悪いけど野球の体を成していないところがあったね。まぁ今年だって評論家に「100敗する」って言われるくらいでミスはあるんだけど、ひたむきに野球をやろうとしている。好プレーも多い。
「そうそうそうです! 失敗することを怖れずにそれを糧としてるんだろうなと思うんです。神宮は好プレーが多かったですね。ヤクルトはわかるんですけど、うちもしっかりやり返してた。王者を相手にいい開き直りができたのかなって」
――ななつぼしさんがツイートしてた「BOSSが撒いた種がジャブのように効いて来る」だね。
「やってきたことが出てるんですよね。いちばんは球際に対するみんなの意識がガラッと変わってる。だからゲッツーが増えた、それも確実にここは取れるっていうゲッツーが増えた。まぁ、三振ゲッツーとかレーザービームとかメモに書いてあるけど、そういう堅実なプレーが増えて負けるんだったら手帳描いていても楽しいんですよ、面白い負け試合だから」
――僕は「最高の最下位チーム」って言い方してます。
「そうですよ、最下位だけど王者を相手にあんな試合ができちゃうんだから。思ってたよりずっと早かったですね。第3戦、北山亘基を送り出すとき、ボスが近寄って何か言ったでしょ。あれがジーンと来ました。あとで新聞読んで中身を知ったんですけど、『越えていけ』ですよね」
――越えていけ。
「もうあの3連戦見たら誰もボスを『パフォーマンスだけ』なんて言わないでしょう。みんな言ってましたよね、『パフォーマンスだけ』。越えていくんです、ファイターズは」
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