1ページ目から読む
2/3ページ目

地下鉄の駅構内がシェルターかわりに

 そして街から人が消えた。

 公園から井戸端会議も子供の歓声も絶え、かわりに砲声が止まぬこのヨーロッパ有数のベッドタウンがゴーストタウンと化した。

 そして地下都市が出現した。

ADVERTISEMENT

 最寄りの地下鉄ヘロイフ・プラッティ駅、スツデンツカ駅等に団地からの避難民が安全を求めて殺到、約700人の市民が地下生活を送るはめになった。

団地近くの地下鉄ヘロイフ・プラッツィー駅は200人以上の住民が避難してきた 撮影・宮嶋茂樹

 地下鉄の駅構内がシェルターがわりになったのは首都キーウもそうやった。特にキーウの地下鉄は世界一深くロシア軍の空爆どころか核攻撃にも耐えられるシェルターにもなるとまで言われていたのである。

 ハルキウのそれは首都の地下鉄ほど深くはないが、まるで新たなコミュニティーが地下に出現したような規模であった。

ボランティアによる1日3回の食事と無料インターネット

 それでもそこに避難しているのはハルキウ全体の人口からすれば、わずか700人である。しかし、ここは地上よりはるかに安全である。そしていまも肌寒い朝夕も風がないぶん意外と温かい。

 が、住み慣れた我が家と違い不便を強いられるし、プライバシーもない。ベッドから机、食器まで持ち込んだ家族もおれば、ペットと一緒の老夫婦もいる。飲み水はプラットホームの両端に水道管がせせり出しており、いつでも汲める。

地下鉄駅の住民のため1日3回ボランティアによる炊き出しが行われた。いまだ朝夕冷えるハルキウで温かい食事はなにより、元気付けられる 撮影・宮嶋茂樹

 トイレは2か所だが、まあ清潔である。ボランティアの炊き出しもあり1日3回温かい食事も提供される。それになにより地下やのに無料のインターネットに繋がるのである。

 日中は危険を承知でここから仕事に出かける市民もいるし、休校中だが、オンラインで授業も受けられるのである。 

 人間食って寝るだけやなく娯楽も必要である。これまたボランティアの衆が駆けつけ人形劇や開いてくれたり、お遊戯に付き合ってくれる。