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「プーチンは城に閉じ込められているようなものなんですよ」ロシアの未来と東アジア戦略《ついにウクライナ侵攻》

小泉悠氏インタビュー #2

2022/02/26

 ロシア軍は24日、ウクライナの軍事施設に対する攻撃を始めたと発表し、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が始まった。ウクライナ側によれば、攻撃は東部だけでなく郊外や南部などの軍事施設にも及び、25日には首都キエフにも侵攻して死傷者もでているという。

2月24日、ウクライナでの軍事作戦実施を表明したロシアのプーチン大統領 ©AFLO

 再三にわたる国際社会からの「ストップ」にもかかわらず、ついに起こってしまったこの事態。世界各国からロシアへの批判が巻き起こっているが、北方領土をはじめロシアと近接する日本には、いま何が求められているのか。

 軍事評論家で、東京大学先端科学技術研究センター専任講師の小泉悠氏のインタビューを、ここに再公開する(初出:2019年11月24日 以下、年齢・肩書き等は公開時のまま)。

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ロシアの東アジア戦略とは?

2019年7月にロシアによる領空侵犯の舞台となった竹島 ©共同通信社

〈あまりに特殊な18世紀並みの国家観をもつ大国、ロシア。2020年以降、ロシアはどこへ行くのか。小泉氏は展望を次のように語る。〉

――日本からすると、中国やロシアと囲んだトライアングルの関係がどうなるかを考えなければいけませんね。

 中国とロシアは有事に協力し合う関係、例えば尖閣諸島をめぐる有事にロシアの太平洋艦隊が駆けつけてくるような関係ではない。けど、尖閣諸島をめぐる議論の中でロシアが中国側に付く、というような展開はあり得る。

 実際に、南沙諸島でロシアはそれに近いことをやった。中国が主張した南沙諸島の領有権を国際仲裁裁判所が退けた際、プーチンは「今回の中国の主張を棄却した判決は中国側の意見を聞いていない。手続きに問題があるから支持しない」という言い方をして、中国に肩入れすることをやった。

 中国もクリミアに関しては、支持しないんだけれども、クリミアの手前まで艦隊を送ってくるぐらいはする。お互い「半ナマ」ぐらいのところで領土問題をサポートし合っています。

――軍事演習も続きますか?

 お互い領有権問題を抱えている場所の近くまで行って演習をやるようにはなるでしょう。それが何を意味しているかはあえて言わないけど、黙って中露で演習する。目的は、外野が勝手に判断してください、と。

 この夏(2019年)、中露の爆撃機が尖閣諸島周辺にきた件が典型例です。ちなみに、ロシアの爆撃機が日本一周する時は、最後は北方領土を通って帰るんです。今後、中露の爆撃機が一緒に日本を一周して、帰りに北方領土の上空を通っていった、なんて状況になると面倒です。そうやって領土問題に中国を引っ張り込む、あるいは中国が領土問題にロシアを引っ張り込む、という展開はあると思います。

――日本が中国や韓国と揉めている状況は、ロシアにとってはメリットがある?

 もちろん、メリットが大きい。先述の通り、ロシアは秩序ではなく乱世の国なんです。2019年7月にロシアの爆撃機が竹島の近くを通ったときも、日本と韓国が徴用工やGSOMIAでもめている真っ最中。

 黙って飛んでいただけで、勝手に日韓がエキサイトしてくれる。実際韓国機が警告射撃をしたら、日本側は「何事だ」と抗議した。「ただちょっとコースを変えただけなのに勝手にエキサイトしてくれた」とロシアは思っているでしょう。