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「プーチンは城に閉じ込められているようなものなんですよ」ロシアの未来と東アジア戦略《ついにウクライナ侵攻》

小泉悠氏インタビュー #2

2022/02/26
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日本に何ができるのか

小泉悠氏 ©文藝春秋

〈ロシアという「西側の尺度」では捉えきれない大国を隣国にもつ日本。膨張を続ける中国という大国、関係が悪化する一途の韓国、ミサイルを撃ち続ける北朝鮮と、混沌とする東アジアの中で日本はどのように方針を立てればいいのだろうか。〉

――今後、日本がロシアを利用できる場面はないのでしょうか。

 日本がロシアを利用できればいいのですが、やはり“柔道家”としてはプーチンのほうが上なんですよね。下手に日本から技をかけると、完全に逆手に取られる可能性がある。だからできることは、日本とロシアの国益で一致する部分を積極的に探すことだと思います。

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 例えば、中露がいくら接近しても、ロシアも手放しで中国に接近するのは怖い。それで最近ロシアはインドを仲間に入れようとしている。(2019年)9月のロシアの軍事演習でも、今年は中国に加えてインドとパキスタンも参加した。中国と直で組むとロシアはどうしても国力の差で引きずられるけど、少なくとも中印露の3カ国でやれば多少緩和できる。

 同時期にウラジオストックで開かれた「東方経済フォーラム」のメインゲストは、インドのモディ首相だった。前年のゲストは習近平だったのですが、「中国だけではなく、インドとの関係もあるんだよ」と内外に見せた。そうやって、ロシアは中国を相対化しようとしていると思うんです。

 日本も、日中露みたいな関係までは国力の差もあって難しいかもしれませんが、日印露の枠組みくらいなら、できるかもしれない。非軍事的な協力を、海軍などを使ってやったりすると、印象的かもしれないですよね。

――ロシアに「中国一辺倒じゃなくても大丈夫」という枠組みを用意するということでしょうか。

 そうですね。あるいは、中国に会いに行く時に、怖いから一緒に付いて行ってあげる、というようなやり取りは出来るかもしれない。

 要するに、ワンオンワンで目を見つめ合うと、中国のほうが「目力」が強い。でも、3、4人で会えば、ずっと見つめ合ってなくてもいい。日本が上手くそういう関係を作って、「僕も一緒に行くよ」とロシアに言ってあげるタイミングを作る、もしくはセッティングしてあげる外交ができるといい。

©文藝春秋

 日本は中国に次ぐ世界第3位の経済大国で、G7のなかで唯一の非NATO加盟国。ロシアにとっても、アジア太平洋地域を考えたときに、その存在は大きな意義を持ちます。

 中国の台頭や、ロシアのしたたかさは認めざるを得ない。その上で、日本としてできることを探していくということだと思います。

「プーチンは城に閉じ込められているようなものなんですよ」ロシアの未来と東アジア戦略《ついにウクライナ侵攻》

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