木村さん自身が49歳という等身大の自分に向きあおうとしている。もはやスーパーな男になる時間は終わったことを自覚し、徹底的に今回のキャラクター造形に力を注いでいる。そのこだわりが随所に感じられる。
そう、主人公・桐沢祥吾は格好良いヒーローではなくて、「ここまで腐っている人間は初めて」と木村さん自身が語るほど「落ちた人」です。
高校時代はボクシング4冠の天才ボクサー。しかし、網膜剥離で引退を余儀なくされ、妻は病によって若くして逝去、何とか気を取り直して取り組んだ焼き鳥屋はコロナ禍で行き詰まりピザ配達のバイトで食いつないでいる。
そこへ母校の高校ボクシング部コーチの話が舞い込んで、桐沢は生徒たちと向き合うことに……。
「そういう人生だから、どうしようもない」「いつ死んでもいい」などネガティブな言葉を口走る木村さんから、新キャラクター作りの意気込みが伝わってきました。「疲労が残る」というセリフを意図的に口にしたりするのも、老いから逃げない表現かと。
いやこのドラマ、主役だけではない。キャスティングも贅沢です。満島ひかり、安田顕、柄本明、村上虹郎、波瑠、市毛良枝、内田有紀、富田靖子……。
中でも、満島ひかりさんがいい。木村さんにまったくひるまず対等に全力でぶつかっていくコメディエンヌぶりはイヤミがなく、時に彼を喰ってしまうほどの存在感もちらつかせる。それがまた木村さんを光らせる。
キムタクゆえの期待度の高さと混乱
じゃあ、いったい何がいけないのか? なぜ、ことさら「一桁台に転落」「打ち切りか」とネガティブな話が噴出するのか。
今どき世帯視聴率だけで右往左往するのも疑問ですが、今期ドラマの全視聴率の平均値をみても、『マイファミリー』(TBS系日曜午後9時)に続く2位と好位置につけているのに。
やはり、「キムタクゆえの期待度の高さと混乱」としか言いようがない。