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木村拓哉が直面した「50歳の壁」

 もちろん、100点満点の完璧なドラマとまでは言いません。特に後半になり、「キムタクゆえ」に陥ってしまったと思える難点がたしかに存在している。

 木村さん自身は「カッコよかったキムタク」のステージから何とか降りようとしているのに、どうやっても「降ろさない力学」があちこちに働いているようです。

 例えば第5話。桐沢が4人の半グレ不良たちと対決し、生徒を救うために鋭いパンチを繰り出し、手のナイフをたたき落として最終パンチのお見舞い。見事にダウンさせた瞬間、桐沢の上にヒーローのイメージが蘇ってきている。

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 あるいは第6話、生徒一人一人とリング上で延々スパーリングをして対峙する桐沢の姿は、不滅のヒーロー。キャッチコピーのとおり「何度でも、立ち上がる。」。

 つまり、脚本がやっぱり木村さんを「ヒーローというリングから降ろさない」力となっています。

 キムタク像に忖度してか、ついつい過去のヒーロー像を再生産してしまう脚本や演出。「キムタクだから」「キムタクゆえに」数字に過剰反応するマスコミや業界。木村さんにヒーローのカッコ良さを延々と求め続けてしまう、ファンや取り巻き。

 では、50歳を迎える木村さんの進むべき道とはどこか……? 50歳の壁をどう越えるのか。「何をやってもキムタク」の揶揄を封印する手段はあるのか?

 近年の木村さんの出演作や同世代の役者を見ると、手段はありそうです。それは「3つの引き算」です。

 1つ目の引き算。『教場』『教場Ⅱ』(フジテレビ系2020・2021年)で演じた風間教官を思い出してみたい。白髪交じりの髪、「両方の目をサングラスによってシェードし、しかも片目は義眼」の不気味な姿。木村さんの特徴のクリっとした丸い2つの目を封印することで、別の存在を見事に出現させました。

『教場』フジテレビ公式サイトより

 目を隠す、といったことは引き算手法の1つと言えますが、例えば主人公ではなくて脇役に徹するというのも、新たな境地を拓く引き算戦略になるかもしれません。