2021年、悪性リンパ腫のステージⅢの検査結果を受けた夢枕獏さん。抗がん剤治療を行うため、「陰陽師」の連載を休んだ中、「入院中に作った俳句のことを書かせて下さい」と始まったのが『仰天・俳句噺』です。刊行を記念して、40年来の友人で、膀胱がんを早期発見して治療した北方謙三さんとの対談をお届けします。(全3回の1回目。続きを読む。)
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「ここに何かある」膀胱がんを早期発見
夢枕 きょうの対談は僕の方からお願いして実現したんです。
北方 何かきっかけがあった?
夢枕 2019年暮れに恒例のカワハギ釣りの船で隣同士になった時、北方さんから「俺、がんだったんだよ」って言われたでしょう。まさに釣りをはじめようという瞬間だったから、「それは大変でしたね」くらいで済ませちゃったんだけど、自分が悪性リンパ腫のステージⅢ、つまりがんの一種だと分かって、同業者の話を改めて聞いてみたいと思ったんです。
北方 俺のがんが判ったのは、その前に急性前立腺炎というのになって、ものすごい高熱と痛みに襲われた。39度台の熱がずっと下がらず、強い抗生物質を一週間くらい飲み続けてようやくストーンと落ち着いて。
夢枕 それが前立腺がんに……。
北方 いや違うんです。前立腺炎が完治したのを確認するためにエコーをかけていたら、医者の手が膀胱の上で止まって「ここに何かある」って言うんだよ。そこで内視鏡を入れてみたら、膀胱がんが発見された。膀胱がんの初期症状は血尿が出るらしいんだけど、そういうこともまったくなくて、偶然に早期発見できたのは本当に不幸中の幸いでしょう。