2021年、悪性リンパ腫のステージⅢの検査結果を受けた夢枕獏さん。抗がん剤治療を行うため、「陰陽師」の連載を休んだ中、「入院中に作った俳句のことを書かせて下さい」と始まったのが『仰天・俳句噺』です。刊行を記念して、40年来の友人で、膀胱がんを早期発見して治療した北方謙三さんとの対談をお届けします。(全3回の3回目。最初から読む。)
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忙しい時ほど遊んでいる
夢枕 最近、20年来自己流でやってきた書の個展のようなものを初めて開いたんです。
北方 誌面でしか見ていないけど、ある意味、格闘でもしているんじゃないかと思うような字だったね。
夢枕 まさに格闘というか、遊んでいるような感じで楽しいんですよ。でもあまり踏み込むと小説を書く時間が減っちゃう心配がある。やっぱり小説を書くのがいちばん楽しい。
北方 獏ちゃんの場合、連載途中のものがいっぱいあるけど、俺は『チンギス紀』の1本だけで、毎月150枚を書いている。
夢枕 同じ「小説すばる」に連載中の『明治大帝の密使』は1回15~20枚ですけど、僕は色んな雑誌に分散して書いているから、毎月の枚数はあまり変わらない気がしますね。
締め切りギリギリまで動画を観ている
北方 どっちがいいかは作家によるし、以前は俺も1回100枚の原稿を3本か4本抱えていた。それが5回で1冊になる。1年間に12冊も刊行して、「月刊北方」なんて言われていた時期もあったわけだ。
夢枕 お互いに昔はよくあんなに書けたと思いますよね。
北方 それも仕事が忙しい時期に限って、海外に3か月間行っていたりして、実際は9か月間で仕事を全部やっていたんだよ。
夢枕 僕も仕事が忙しい時ほど釣りに行って遊んでいる。それでも結構書いてますね。