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「膀胱がんで死んだ友達ー松田優作が頭に浮かんで…」 がんから復活した北方謙三が励みにした“船戸与一の闘病”

「膀胱がんで死んだ友達ー松田優作が頭に浮かんで…」 がんから復活した北方謙三が励みにした“船戸与一の闘病”

夢枕獏さん×北方謙三さん#2

source : オール讀物

genre : エンタメ, 読書

note

北方 でも基本的に俺と獏ちゃんの関係というのは、俺がいじられる側なんだ。君は俺のことをどれだけ和歌に詠んだんだ?

夢枕 ああ、仰天和歌ですね。

北方 「立てば立松、座れば椎名(誠)、歩く姿は北方謙三」

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夢枕 よく覚えていますね。「木枯らしにコートの襟ちょっと立ててしまう、君の心にも棲(す)んでいる北方謙三」というのもありました。いい短歌じゃない(笑)。

北方 プロの写真家の使う銀座の富士フォトギャラリーで、2人の写真展をやったこともあったけど、あれも面白かったよなあ。

夢枕さんの「書」

「人を撮影する時には写真は暴力だと思って撮るほうがいい」

夢枕 北方さんは人間ばっかりいつも撮っていますよね。僕は一回、夜店の人を撮っている時に怒鳴られてから、人間を撮るのが怖くなっちゃったんですけど、「獏ちゃん、写真は暴力なんだ。暴力を振るわれれば誰だって怒る。人を撮影する時には写真は暴力だと思って撮るほうがいいよ」と北方さんに言われて大いに納得したし、以後、このセリフは他でも借用させてもらっています。

北方 海外でも貧しいスラムに行って、こっちがいい被写体だと思っても相手は撮られたくない。コートジボワールでは石を投げられたけど、これは俺が先に暴力をふるったんだから仕方ないな、って。

夢枕 写真展でも北方さんはアフリカの黒人の写真が多くて僕は花の写真ばっかり。

北方 しかも獏ちゃんは花を接写レンズで撮っているから、おしべとめしべがベターッとくっつきそうで、よく見たらちょっといやらしい(笑)。

(初出:オール讀物2022年1月号、撮影:志水隆/文藝春秋)

仰天・俳句噺

夢枕 獏

文藝春秋

2022年6月27日 発売

「膀胱がんで死んだ友達ー松田優作が頭に浮かんで…」 がんから復活した北方謙三が励みにした“船戸与一の闘病”

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