文春オンライン

「60になったときに、この仕事をやってるのは嫌だなって」50歳でホタテビキニを着て“自撮り”作家へ転身…女性写真家(56)が語る“吹っ切れた理由”

マキエマキさんインタビュー #2

2022/06/05
note

ーー僕は49歳ですけど、非常に共感できます。もう、人生の天井が見えているというか、いまの仕事を続けていたとしても、それもだんだんとしぼんでいくだけなのもわかるといいますか。 

マキエ マキエマキを始める前は、いつ死んでもいいと思ってたので。「将来の夢はなんですか」とか聞かれても、「夫が泣かないような状態で死ぬことかな」ぐらいの答えしか言えなかったんですよ。 

 仕事に関して言えば、請負仕事をやってた頃はオンリーワンじゃないんですよね。「誰でもできる仕事」をしていたのが、マキエマキとして「私じゃないとできない作品」を出すことになった。これを得られたことで、気持ちはだいぶ変わりました。 

ADVERTISEMENT

「ピンク映画」シリーズより(マキエマキさん提供)

セルフポートレートと「体力」問題

ーーセルフポートレートの撮影は、体力的にハードではないですか。 

マキエ 撮影をハードだと思ったことがないんですよ。暑かったり、寒かったり、少しでも辛いと思ったらやめちゃう(笑)。誰かに頼まれている撮影でもないから。 

 真夏だと、早朝か夕方以降しか撮影しないので。日中はあまりやらないです。移動してて、その通過地点ですごくいいとこを見つけたら撮っちゃいますけど。でも、せいぜい1時間もやったら長い方なので。 

ーー西穂高岳で雪山をバックにホタテビキニになっている作品がありますが、あれは本気で寒そうですけど。 

マキエ ぜんぜん辛くないです。撮影中は脳みそからなんか変なもの出るので、寒くないんですよ。それでモニターで撮ったやつを確認して、OKってなった途端に寒くなる(笑)。

 

 まぁ、そもそも撮影する場所には冬山の装備で行って、その後脱いでますから。 

衣装や、ロケ地探しの“苦労”

ーーマキエさんの作品は「昭和」や「場末」もテーマのひとつになっています。その世界観を具現するロケ地を探すのも大変だと思うのですが、衣装のほうも苦労されているのではないかと。 

マキエ 衣装は基本的に古着で、使ったら処分してます。同じものは2回着たくないんで。古着をヤフオクで探してるんですけど、なかなかイメージのものに出会えないとかありますね。あと、現場に行って着てみたらなんかイメージと違ったとか。しょうがないから、そういう時は、別の日に撮影場所に行き直して再撮影します。 

「ピンク映画」シリーズより(マキエマキさん提供、タイトル揮毫 希代)

 撮影場所も、撮る前に現地を一回調査して。たとえば、人気がなくて脱げる海岸であっても、抜けがよくなかったり、日の当たりがよくなかったりする場合がありますから。太陽の照射角度とかを調べてから行きますよ。何時ぐらいにここに行くと、ここから差すから逆光でイケるとか、順光だなとか。 

 だから、露出系が趣味の方から聞かれますよ。「これ、どこの海岸なんですか」「ここって脱げるんですか」って(笑)。 

関連記事