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無保険車との事故で「泣き寝入り」してしまった例も…

 任意保険に加入する大多数のドライバーにとって、恐ろしいのが「無保険車」からの「もらい事故」である。加害者が任意保険に加入していない場合、自賠責では賄えない物損分などの賠償責任は加害者自身が負うことになる。この際、当人の弁済能力によっては支払いが滞るリスクも考えられる。

「無過失の事故の場合、保険会社が示談交渉を代行することは弁護士法で禁じられています。そのため、当事者間で交渉を進める形になるのですが、やはり話が拗れてしまい、被害者側が十分な賠償を受けられずに終わってしまうケースが多いようです」(損保会社スタッフ)

 Cさんは交差点で停止中、未成年の運転する原付バイクに追突される。警察を呼び、少年側は全面的に非を認めたものの、バイクは友人から借りたものであり、保険には加入していないという。

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 少年の親は「修理代はすべて負担する」というので、Cさんがディーラーで見積もりを取って送ったところ、しばらくして「高すぎて払えない」「もっと安く直せるはず」といった答えが返ってきた。

 その後、いくつかの工場で見積もりを取って送ったが、そのたび理由をつけて支払いを渋られる。結局、Cさんは自分の手を煩わせることに辟易し、自身の車両保険を使って直すことにした。

「相手側が任意未加入の無過失事故で、相手からの支払いが望めない場合、Cさんのように自身の車両保険を使う方法がまず考えられます。しかし基本的に、車両保険を使うと3等級のダウンになりますから、次年度からの保険料は増えてしまいます。

 ただ、現在では無過失のもらい事故であれば、等級を落とさずに車両保険を使用できる『無過失事故特約』を自動付帯する商品も増えていますので、一度契約状況を確認してみることをお勧めします」(同前)

およそ9台に1台は任意保険未加入

 しかし、これはあくまで自身が車両保険に加入している場合の話である。その他の手立てはないのだろうか。

「車両保険を使う以外には、弁護士特約を使う方法が考えられます。これは損害賠償請求を弁護士に委任する際の費用を補償するものですが、とくに保険会社側が示談交渉に介入できない『もらい事故』の場面で役に立つ特約です」(同前)

 上のCさんのように、賠償金の支払いを拒む相手と自力で交渉を続ける労力は相当なものだ。法に則った措置を代行してもらうことで、労力を抑えつつ、適正な額の支払いを求められるわけである。

 しかし残念ながら、車両保険に入っておらず、弁護士特約も付帯していない場合、任意保険未加入者による「もらい事故」に遭ってしまうと、自力で賠償金を回収するほかない。

 なお、「損害保険料率算出機構」の資料では、2021年3月の時点で、自動車保険および自動車共済の対人賠償普及率は88.4%である。およそ9台に1台は任意保険未加入であることを考えると、弁護士特約の重要性も際立ってくる。