二瓶 このコロナで何度も大きな経営判断をやってきたので、いまは勢いがありますね。それまでは「切り替えるのが怖いな」と守りに入っていましたが、今は攻めに転じています。
――それは例えば?
二瓶 これまでは、宿泊される方のプライベートを守るために、あえて宿泊者以外の方は立ち寄りにくいような作りにしていたんです。でも、いまは玄関前を開けて、地元の名産など手に取っていただきたい物を売店に置き、ショールームのようにしています。ふらっと立ち寄っていただいて、「今度泊まろうかな」と思ってもらえたらいいなと。
もう一歩踏み込んだ「地域との関わり方」が必要
――コロナを経ての大きな変化ですね。他にも力を入れていることはありますか?
二瓶 温泉旅館って、もちろんお風呂も大切だし、設えも大切だし、他にもたくさん大事なものがあるんですが、うちはもっとお料理に力を入れたいと考えています。
――お料理は以前から力を入れていらっしゃったと思うのですが。
二瓶 仕入れが変わったんです。コロナの影響で、お付き合いしていた生花店や八百屋が閉じてしまったり、毎日配達してもらっていたものが週2回になったりとか、いろいろな変化がありました。ビネガーやはちみつなどの輸入食材が手に入らなくなったり、配送料が上がったり……。簡単に明日買えるだろうと思っていたものが、買えなくなったんです。
そこで、この際、地元食材しか使わないというチャレンジをしています。地酒を扱うとか、ワインも地元のワイナリーのものを揃えるとか。食材を購入する先も紹介していただいて、地元の信頼できるところから仕入れるなど、もう一歩踏み込んだ地域との関わり方をしていかないと、宿として淘汰されていくだろうなと。
――その中で新たな出会いや発見もありそうですね。
二瓶 たくさんありましたね。いろんな人と関わり、話していくと、地元の方も知らない料理がいくつも出てくるんです。例えば、福島の保存食で「しみもち」という、冬の間3か月くらい冷気にさらして作る餅があります。ごぼうの葉っぱでつくる餅なんですが、10年前に作った餅が今も食べられます。
今後は、旅館の食事をこうした地域の食のプレゼンの場と捉えて、お客様に伝えていけたらいいなと思っています。
「地元のお客様も増えてきました」
――地元との繋がりが強くなったんですね。泊まりに来るお客さんも、今は地元の方が増えていますか?
二瓶 コロナ前は5割が県外、5割が県内と半々でしたが、今は県内が8割、県外が2割ですね。地元の二本松市内のお客様も増えてきました。「実は近場の温泉って、近すぎて行かなかったよね」とおっしゃる方もいて。
本当に苦しい時に助けてくれるのは地域のお客様だなと実感しましたし、そうした方たちをどのように大切にしていくのかが今後の課題です。
――徐々に、国内であれば旅行もしやすい雰囲気になってきています。二瓶さんから見て、“コロナ後”の旅館経営に必要なことは何だと思いますか?