みうらさん独自の視点で見いだされ、世に広く面白がられた『わさお』『シベ超』『ペキフー』といった映画の数々。そこに到達するため、みうらさんは多くの“修行映画”を乗り越えてきた……。「映画秘宝」誌での長期連載が単行本化するタイミングで、2人が語る「そこがいいんじゃない!」としか言えない映画の数々。(構成=秦野邦彦)

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みうら 町山君とのこの対談、毎回すごく楽しみにしてるんだけど、町山君が今アメリカにいることを全然感じさせないのは何でかなぁ?

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町山 太平洋を越えてる感じがしないですよね(笑)。

みうら 基本、思い出話だからかねぇ(笑)。

町山 東宝特撮とか、年寄りしかわからない昭和の話(笑)。

みうら でも、読者も今、年寄りがメインなんでしょ?(笑)だったらそれでいいと思うんだけど。

町山 その割に字がちっちゃくて読めないという。

みうら 矛盾あるよね。それは編集者がまだ若者に向けて作ってる気概があるからじゃない? 町山君が立ち上げた「映画秘宝」も当時はそうだったでしょ?

町山 映画秘宝は1995年創刊だから、当時は若い人も雑誌読んでましたよ(笑)。

みうらじゅんさん(左)と町山智浩さん

みうら 結局、若い若くない関係なく、それ以上踏み込むやつと踏み込まないやつの2タイプが世の中にいてね、映画秘宝は前者に特化したマガジンだったんで、すごいなと思ってたんだ。

町山 全くその通りです。

みうら でも、時が経つにつれ、老ガンズとなってね、特に町山君と柳下毅一郎さんがやってた対談の級数がものすごく小さく感じるようになって(笑)。

町山 俺も全然読めない(笑)。

みうら あれは何? 読まないでくださいって気持ちもあってのこと?(笑)

町山 そんなことはないです(笑)。編集が無理やり情報を入れようとするからですね。

みうら 字は詰め込んである方がお得だっていう考えがあったもんね(笑)。

町山 貧乏性だから、とにかく情報がびっしり入ってるのがいいという、おしゃれと真逆の方向(笑)。ケイブンシャの『怪人怪獣大百科』の表紙に「450ひきの怪獣登場」とか書いてあるのと一緒ですよ。数字が売りになる世界。

みうら 多ければ多いほどいいってね(笑)。町山君が俺に連載を頼んでくれた日のこと、まだよく覚えてるよ。当時、うちの事務所が西新宿にあって、その近くの飲み屋でね。

町山 1999年ですね。

コメントしづらい「修行映画」の世界

みうら 『スター・ウォーズ』の特集だったもので、俺は主要メンバーを東宝怪獣映画俳優に当てはめた漫画を描いたんだ。ルークは佐原健二、ハン・ソロは土屋嘉男でって具合に(笑)。

町山 昔も今もやってること変わってない(笑)。

みうら その連載をまとめた本を洋泉社から3冊出して、2015年に文藝春秋が『みうらじゅんのゆるゆる映画劇場』として文庫にまとめてくれたんだけど、それ以降の2014年の公開作から今年3月の「秘宝」最終号に載った『大怪獣のあとしまつ』(22年)までの7年分を今度、『マイ修行映画』ってタイトルで出すことになったんだよ。

最終回、『大怪獣のあとしまつ』を扱ったマンガの一部。見返っている人物は濱田岳。

町山 7年分はすごいですね。

みうら せっかくだから、町山君も振り返ってもらえないかと思ってさ。宣伝もかねてね(笑)。何せ、秘宝はマニアをメインとしてたから、俺も考えたわけで。マニアが観ない映画こそマニアにとって一番マニアックなんじゃないかって。例えば、『わさお』(11年)とかさぁ(笑)。

町山 『わさお』(笑)。

みうら そこは観たい映画はさておき、じゃない?

町山 うちの娘にいつも言われてますよ。「父ちゃんは好きな映画観て、それで仕事だっておかしいだろ」って。