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みうら いくら怪獣映画が好きとはいえ、さすがにゴジラシリーズ8作目『怪獣島の決戦 ゴジラの息子』(67年)はどうかなと思うじゃない? でも、“ここまで来たんだから観ないわけにはいかない”になるわけで。

町山 なるなる。

みうら よくシリーズもので「初期は面白かったけど最近のは観てない」とか言う人いるけど、そこは自分洗脳して、全部面白いにしとかないと気が済まないタチだから。

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町山 『怪獣総進撃』(68年)は今観直すと中盤のムーンライトSY­­­―3号のあたりがものすごくダルいんですよ。

みうら ダルいけど、そこがいいんじゃない! と(笑)。

町山 みうらさんまた違うこと想像してるからでしょ(笑) 。

「そんなバカな映画があるわけない!」

みうら どうにかこちらで仕向けなきゃ(笑)。それで言えば、怪獣映画の作戦会議のシーンって、子どもの頃、かったるかったじゃない? 早く終わればいいと思ってたけど、それを逆手に取った『シン・ゴジラ』(16年)はすごかったね。

町山 あれは岡本喜八監督が会議を面白く見せる術の天才で、怒鳴る顔だけアップで撮って繋ぐからすごくテンポ良くなるのを見習ってるんです。

みうら それを導入したんだ。でも、だからこそ『地球防衛軍』(57年)の会議シーンの後にようやくモゲラが登場した時って、最高だったんじゃないかねぇ。要するに団鬼六のSM映画における焦らしプレイみたいなものでさ。

町山 会議のシーンが面白くなるのは、出ている俳優の名前を全部覚えてからですよ。“あっ、ハロルド・コンウェイだ!”とか“藤田進さんがいい席に座ってる!”とか。

みうら 吉本新喜劇の役者みたいにね(笑)。ビデオが誕生してから“飛ばし見”ができるようになったじゃない? あれが焦らしプレイを台無しにしたんだよね。それでも昭和の頃はエロビデオのソフトは高かったから、飛ばし見なんて贅沢なこと絶対しなかったもんだけどね。

町山 インタビューやドラマ部分もしっかり観てましたね。

みうら “これを乗り越えれば……”ってね(笑)。それをただ、かったるいとか言うのは普通過ぎて、いかんと思ったもんですよ。

町山 映画秘宝は世間の人がつまんないと言う映画を“いや、面白い!”でやってきたし、“観てる人いるの?”って作品を徹底的に全部観直すことが最初のコンセプトでした。『スウォーム』(78年)って殺人蜂の大群がアメリカを襲うパニック映画があって、原発が爆発するんだけど、原因は管制室でおっさんが滑って転んでボタンを押しちゃうから。それをその通り原稿に書いたらキネ旬で「そんなバカな映画があるわけない!」って批判されたんです。それが抗争の発端ですよ(笑)。

みうら そんなことで(笑)。でも、そこがいいんじゃない! ってね。

マイ修行映画』(文藝春秋)

町山 あるんだから仕方ない。『ミラクル・カンフー阿修羅』(80年)だって、今の人に言っても信じてもらえないけど。

みうら だろうね。でも、あるんだから仕方ないよ。俺もそれ、映画館で観たクチだから(笑)。

町山 『龍の忍者』(82年)は観ました? 父親の仇を討つために中国に渡った真田広之がカンフーの使い手と戦うんですけど、前半は市川雷蔵の『忍びの者』(62年)みたいに殺伐とした演出なんです。

みうら 老いるショックか、覚えてないなぁ。

町山 最後に共通の敵が出てきて一緒に戦うんだけど、どうやって倒すかというと「あいつは修行ばかりして女性耐性がないはずだ」って紙に描いたエッチな絵を見せると頭がボンッて爆発しちゃうの。

いきなり着ぐるみの熊かよ!

みうら 面白いじゃん(笑)。

町山 面白いけど、それまでの真面目な演出が台無しになっちゃうんです。グラビアアイドルの津島要ちゃんが真田広之の恋人役なんですけど、カンフーの使い手が後ろから彼女の胸をはだけたら光学合成のおっぱい光線がバーッと出て敵の顔が焼かれてEND。

みうら そうじゃなきゃ(笑)。

町山 でも『龍の忍者』はシリアスなところの演出もすごくいいの。俺、めちゃくちゃ好きで20回以上観てますよ。

みうら 俺の『わさお』並みじゃん(笑)。こっちもかなりスゴいよ。

町山 そうなの? 薬師丸ひろ子さん出てるでしょ。