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関西屈指のディープ地帯「今里新地」…裏風俗エリアが“ベトナムおしゃれガールズタウン”に変貌した理由

2022/06/16
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 店で揃えている服はベトナム国内の基準でも「かなりオシャレ」らしいが、値段を聞くとジャケットが4500円でワンピースが2700円……と、破格の安さだ。あまりにも安いので、お金がない日本人の若い女の子が買いに来る例もあるという。

怪レい日本語のベトナムベビー用品店

 さらに歩くと、独特の存在感を放つ店舗を発見した。オレンジの文字と赤ん坊のイラストが目を引く「Man Kids(マソキッズ)」だ。マンなのかマソなのか、すでに看板の時点で日本語が怪レい。

ハノイの街角です、と言われても違和感のないたたずまい。2022年5月25日。撮影:Soichiro Koriyama

「ちょと。あなた、何ですか」

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 店の外観をカメラにおさめていると、店番をしていたベトナム人女性が扉を開け、いぶかしげな表情で声をかけてきた。だが、事情を話してみたところ、取材をあっさりOKされる。私は過去2年ほどで百数十人は在日ベトナム人に会っているが、これまで取材拒否はほぼゼロだ。外部から他者が来たときはとりあえず受け入れて様子を見るのがベトナム式の人間交際術らしい。

 さておき、女性は30歳のチャン・トゥイ・ヴァンさんといった。ハノイから紅河を50キロメートルほど下った場所にあるナムディン省の出身である。既婚で、別の仕事をしている32歳の夫もベトナム人。このマソキッズ(仮)は1年前に開店した。

なんと息子の名前だった!

「自分に子どもが生まれてから、日本の子ども服や赤ちゃん用品が高くて困ったんです。それに子ども服の趣味が、ベトナムと日本で違う。絵本や知育おもちゃもベトナム語のものがほしい。だから自分で店をつくりました」

 店名の「Man」は、なんと息子の名前であり、店舗のイメージキャラクターも息子の写真をイラスト化したものという。カタカナ表記が変なのは──。看板をすべてベトナム本国で作ってもらったからなのだが、店主のヴァンさんは間違いに気づいておらず、客である他のベトナム人たちも細かいことは気にしないのでノープロブレムだ。

ネットでの販売が中心だが、生野区はベトナム人が多いので店舗に直接買いに来る人も。2022年5月25日。撮影:Soichiro Koriyama

「ベトナム人向けの子ども用品店、うちが日本で最初です。たぶん」

 店内ではベトナム語の知育玩具や絵本のほか、0~5歳児向けの靴や服、さらにマタニティウェアも売っている。値段を聞くと、ベビー用のシャツはなんと500円。女の子がお誕生日に着るようなドレスも2650円という衝撃の価格だ。おそらく先程のアキさんの服屋と同じく、ベトナム本国や中国から格安で買い付けているのだろう。