26 新原町田グリーンハイツ(1969年/有楽土地)
「新原町田グリーンハイツ」(相模原市南区鵜野森)は、有楽土地(現:大成有楽不動産)が分譲、大成プレハブが施工という、ひとつ前で紹介した「新原町田鵜野森団地」と同じ組み合わせによる22棟からなる624戸の大規模団地。名称から「団地」が消えている点も興味深い。
この2つの団地プロジェクトが、歴史的に意味深いと感じるのは、ほぼ同時代に進行していた公団・公社の団地事業に対抗する形で、新しい間取りの提案がなされていることに目を見張るからである。
公団はこの時代に、「DK」タイプから「LDK」タイプに移行し、ダイニング空間を広くすることで「憩いの場」としてのダイニングキッチンに居間を併せ持つ設計に向かった。
一方で、「3LDK」の居間を居室に変えて「4DK」とすることで、すべての家族に部屋をという流れも見られた。有楽土地と大成プレハブは、2つの団地プロジェクトで「LDK」を、「L」と「DK」の2つの空間に分離するという大胆なコンセプトを導入している。
「3LDK-A」タイプはリビングとダイニングの間に廊下があり物理的に分離されている。「3LDK-B」タイプでは、リビングとダイニングの入口をそれぞれ分けて、リビングはより広い空間を確保し、寝室としても機能する居室とつなげている。
これは間取りのプロトタイプである公団「51c」プラン以降、ダイニングキッチンを徐々に広くしていく過程でLDKが誕生したのとは別の方法で、リビングの独立性を高めて生活音から切り離された「リビングルーム」を作り上げるという意思を感じる。
第2回で紹介した、「リビングダイニング」と「寝室」の組み合わせによる「51c」型の生みの親、鈴木成文(建築学者、元神戸芸術工科大学学長)は、後年に「マンションが広くなっているのに間取りが51cを引きずっているのに違和感がある」という趣旨の発言をしている。確かにその指摘は一方では正しい。ただ「51c」スタイルからの脱却は、すでに民間団地の分野において実行に移されていたと考えるべきであろう。
その意味においてこの物件の存在意義は非常に大きい。現在では築53年となったが概ね1600万円以上の価格で流通している。