「自分の夢にもう一度向き合いたい。夢を叶えたい。これから先は、もう思い残すことがないような競技人生を送れるようにする」
3月に東京辰巳国際水泳場で開催された競泳の国際大会日本代表選手選考会の初日。こう話す瀬戸大也(TEAM DAIYA)の表情は、どこか吹っ切れたようにも見えた。
自らが招いた過ちの結果とはいえ、一度狂った歯車はそう簡単に元には戻らなかった。
すべてがちぐはぐで、アクセルを踏んでも進まなければ、ブレーキを踏んでも止まれない。おおよそ人生においてはそんなタイミングが一度や二度は訪れるものだが、瀬戸にとっては2020年から2021年がまさにその状態だった。
不倫報道で、家族思いのキャラクターから一転
東京五輪の延期が決まった2020年秋、「週刊新潮」が瀬戸の不倫を報じた。記事では瀬戸が自分の車でキャビンアテンダントの女性とホテルに行き、昼下がりの情事を楽しんだ後、愛娘を保育園に迎えに行く様子までが克明に記されていた。爽やかなイメージで家族思いのキャラクターだと思われていたトップアスリートの不貞は、世間や競泳ファンに衝撃を持って受け止められた。東京五輪のホープだった男は、一転して強烈な逆風に晒されることとなる。
迎えた10カ月後の2021年7月、東京五輪。水泳人生のすべてを懸けて臨んだはずの大舞台の結果は、惨憺たるものだった。
競泳担当のスポーツ紙記者が振り返る。
予選落ち、そして決勝進出もメダルに届かず
「最も得意とする400m個人メドレーでまさかの予選落ち。その後に出場した200mバタフライでも決勝に進むことすらできませんでした。“最後の砦”となった200m個人メドレーでは戦友の萩野公介(※五輪後に引退)とともに何とか決勝に進出したものの、メダルには届かない4位に終わりました」
レース後のコメントも、自身の泳ぎに言及することなく、ライバルの萩野との関係性について話すので精一杯だった。
「全力は尽くせたのでスッキリしています。メダルは獲れませんでしたけど、それ以上に幸せな時間を過ごせました。公介と一緒に夢の舞台で泳ぐことができて幸せですし、一緒に戦えたことが幸せでした」
そして、そんな言葉を最後に瀬戸自身は表舞台に出ることがなくなった。移り気な周囲の興味も薄れてしまったのだろう。五輪前はあれほど騒がしかったメディアからも、その姿を消した。
では、失意の東京五輪後、瀬戸は一体どうしていたのだろうか?