FOXニュース(電子版)は両球団のツイートにすぐに反応し、「悲劇を選んで、自分たちの政治的主張を広めているようだ。これは最近の(人種差別に抗議する)黒塗り画面の投稿と同じで、何も達成できないだろう。大きな声で叫び続けるだけだ」とこき下ろした。そして「両球団がもし問題解決の助けになりたいなら、ファンを数時間でも現実社会から逃避させてあげるべきだ」と試合内容を伝えることを求めた。
フロリダ州のデサンティス知事(共和党)は6月2日、レイズの新キャンプ地候補になっていた運動公園整備の予算3500万ドル(約47億円)の執行に拒否権を発動した。デサンティス知事は銃所持の急進派で、住民が許可なく銃を持ち歩けるよう法改正を進めている。
「既に決めていたこと」と拒否権発動が銃規制を訴えた球団への報復であることを否定した。しかしワシントン・ポスト紙によると、6月3日の講演会で「私企業の政治活動に補助金を出すことは不適切」と銃をめぐる議論が理由の一つであることをにおわせたという。
“裏切り”に怒る保守派
共和党の議員や保守系メディアが大リーグの社会問題への関与に激しく嫌悪感を示すのは、野球が保守を象徴する文化だと信じており、「裏切られた」という思いが募るからだろう。最初から敵(リベラル派)と目されている米プロバスケットボールリーグ(NBA)に向けられる批判とは質が違う。
2021年のオールスター戦の開催地変更でも、保守派の大リーグへの失望が分かりやすく表れた。ジョージア州で事実上黒人の投票権を制限する州法が成立したことを受け、MLBがジョージア州アトランタからコロラド州へ開催地を移した。FOXニュースは「そもそも野球はアメリカの娯楽で、楽しく、統一された、基本的に非政治的なものだったはずだ」と嘆き、クルーズ上院議員らはMLBが享受する反トラスト法(独占禁止法)適用除外の特権をはく奪するべきだと主張した。
松井も直面、異論許さない空気
確かにこれまで大リーグはスポーツ界における保守派の牙城であり、私の米国在住時にもそれを実感することがあった。米国がイラク戦争に向けて突き進んでいた2003年2月、NBAのオールスター戦でスティーブ・ナッシュが“No War, Shoot for Peace”とプリントされたTシャツ姿で、戦争反対を訴えた。「Shoot=撃つ、シュートする」をかけたスローガンだけでなく、カナダ人であるナッシュがインタビューで堂々と戦争反対を表明し、米国人選手の同調の声も批判意見も報道された。