「古き良きアメリカ」のシンボルであり、プロスポーツリーグでもっとも保守的と目される米大リーグ機構(MLB)が、銃規制や人種問題をめぐって共和党や保守系メディアと対立している。“身内”の批判が意味するものとは――。
日本選手も当事者となったことのある歴史を振り返り、変わりつつある大リーグの社会問題へのスタンスを考えたい。
ヤンキース、試合より銃問題
5月26日、レイズ戦の最中にヤンキースは公式ツイッターで宣言した。
「試合中継の代わりに、銃による暴力についてレイズとともにこのアカウントで伝える。ユバルディ、バファローをはじめ全米各地で数え切れないほど起こった惨事は、耐え難い悲劇だ」
テキサス州ユバルディで5月24日に起きた、小学生19人と教員2人が殺された銃撃事件を受けてのアクションだった。両チームは試合経過には一切触れずに「毎日110人以上のアメリカ人が銃で殺されている」など銃社会の現状を伝える同じ内容の9本のツイートをそれぞれ流した。政府の統計などの引用元をすべてに記した周到なツイートだった。
Every day, more than 110 Americans are killed with guns, and more than 200 are shot and injured.
— New York Yankees (@Yankees) May 26, 2022
野球チームが試合を無視して社会問題を論じるのは異例ではあるが、銃撃事件の後に銃社会の異常さを訴えるのは、至極まっとうなことである。ツイッターには両球団への賛辞のリプライが多く寄せられた。だが一連のツイートを「政治への介入」と捉えて批判する人間が多くいるのも米国である。
47億円投入拒否は共和党知事の報復?
銃規制を訴えることの何が「政治への介入」なのか、日本人には理解しがたい。だが、銃所持を認める米国憲法修正第2条を国民の基本的権利だと考える人々が米国には多くいる。そういったいわゆる保守派の人々に広く支持されるのが共和党であり、FOXニュースなどの保守系メディアである。