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「役者は地獄を見なきゃダメだよ」坂東玉三郎の言葉を喜多村緑郎、河合雪之丞がいま噛みしめる理由

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「EXILEやジャニーズも一緒でいいんじゃない」

玉三郎 今後は歌舞伎と新派がもっと気楽に行ったり来たりしたらいいでしょう。そういう意味では、私はもう土足でね、垣根を越えてきたんです。でもたぶんヨーロッパでもアメリカでも、そういうことをしたものが成功してきたんだと思う。「シルク・ド・ソレイユ」を見て下さい。世界の金メダリストを集めてエンターテイメントをしたわけじゃないですか。どうしてそういう発想になれないのか、ということです。

――今回は、新派と合同でという話が来た時にはもう「乗った」みたいな感じだったのでしょうか? 

玉三郎 もう一瞬で決めました。 でもね、『与話情』ならば稽古は要らなかったから、5月29日まで御園座の舞踊公演を入れちゃっていたのね。おかげさまで、今は移動中ずっと、脚本を読んでいる。有吉先生が演出してくれたら何て言うのかしらって、ちょっと想像しながら読んでいるのだけど。

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 この前、劇団EXILEの子(秋山真太郎)が新派の舞台(『黒蜥蜴』)に出てたじゃない? EXILEとかジャニーズとかみんな入ってやれるような時代でいいと思う。芝居志望の子たちにも門を開けて。

雪之丞 それが新派ですよね。

河合雪之丞

玉三郎 そう。こういうふうに枠が入っちゃってるから、もう私は土足で踏み込むのよ(笑)。とはいえ私の考えを皆さんに押し付けることはできない。ということは、今回の試みが成功しなければ、何も言えないし、不成功で終わったら元の枠組みへお帰り!ということになってしまう。とにかく芝居だけはね、開けなくちゃわからないし、閉めなくちゃわからない。もうこれはね、実を毎日踏むしかないわね。

(聞き手:九龍ジョー 構成:週刊文春WOMAN編集部 写真提供:松竹)

*この鼎談は、6月21日に発売する『週刊文春WOMAN』2022夏号の記事の一部を先行公開しています。『週刊文春WOMAN』2022夏号には、鼎談の完全バージョンに加えて、坂東玉三郎『ふるあめりかに袖はぬらさじ』特別グラビアも掲載します。

ばんどうたまさぶろう/1950年生まれ。56年、十四代目守田勘弥の部屋子となる。57年、坂東喜の字を名乗り、初舞台。64年、十四代目守田勘弥の養子となり、五代目坂東玉三郎を襲名。重要無形文化財保持者。舞踊家、演出家、映画監督としても国内外で活躍する。

 

きたむらろくろう/1969年生まれ。88年、歌舞伎座にて本名で初舞台。同年7月、市川段四郎に入門し、市川段治郎を名乗る。94年、三代目市川猿之助の部屋子となる。2011年、二代目市川月乃助と改名。16年、劇団新派に移籍し、二代目喜多村緑郎を襲名。

 

かわいゆきのじょう/1970年生まれ。88年、三代目市川猿之助に入門し、市川春猿を名乗る。94年、三代目市川猿之助の部屋子となる。2017年、劇団新派に移籍し、河合雪之丞と改名。

INFORMATION

【作品情報】
『ふるあめりかに袖はぬらさじ』

 開港まもない幕末、横浜の遊郭・岩亀楼。遊女・亀遊(河合雪之丞)はアメリカ人客から身請けを申し込まれた日に自害し、死後「攘夷女郎」に祭り上げられる。やがて、真相を知る芸者お園(坂東玉三郎)までもが「攘夷女郎の物語」の語り部となってゆく。

歌舞伎座「六月大歌舞伎」第3部(午後6時開演)
6月27日(月)まで東京・歌舞伎座にて上演中
https://www.kabuki-bito.jp/theaters/kabukiza/play/761

「役者は地獄を見なきゃダメだよ」坂東玉三郎の言葉を喜多村緑郎、河合雪之丞がいま噛みしめる理由

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