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 この問題を解決させるには、まず一つとして女性が奨励会を抜けて四段昇段を実現させることだろう。それには女性の奨励会員を増やすことが必須だ。「9対1の1に放り込まれるのは性別に関係なくきつい」と語ったのは上田初美女流四段だ。

 もう一つは、女流棋界から男性棋戦に参加して、タイトルを獲るような存在が出てくることだとも思う。現状では夢物語と言わざるを得ないが、今以上に充実した女流棋界で棋力をより向上させ、奨励会を突破せずともトップクラスの男性棋士と互角に戦えるような女流棋士が現れたらどうか――。

 

 蛸島女流六段が語る。

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「女流棋士制度が発足して、そろそろ50年になります。ここまでの歩みが早いのか、遅いのか、それは私にはわかりません。しかし現在、将棋を指す女性の棋力向上が目覚ましいのは間違いないところだと思います。それ以上に、過去と現在の大きな違いは、自分の意志で将棋の世界を目指し、プロになりたいという女性が増えてきた点だと思います。大学に入ってから将棋の面白さを知り、女流棋士になりたいという方もおられます。そうした方々が増えている様子を見て、女流棋界はさらに発展していくのだろうと思っています」

記者会見が終わり、ふと3階の棋士室をのぞいてみた

 里見が棋士編入試験を受けるかどうかは本人にしかわからない。受験を期待する声が多いのは事実だし、「プロならファンの期待に応えるべきだ」というのも一つの意見だ。正直なところ、筆者も受験してプロ入りする姿を見たいとは思っている。だが「本人の意思に反してでも受験をして欲しい」というファンがそこまで多いとも考えにくい。

 棋士編入試験は、資格を得てから1ヵ月以内に申し出れば実施が決まる。果たして里見の結論はどうなるだろうか。

 

 また、棋王戦の本戦トーナメントでは、屋敷伸之九段-阿久津主税八段戦の勝者との対局が決まっている。

 関西将棋会館4階で行われた記者会見が終わり、里見が退席すると当然ながら報道陣は帰途に就く。筆者もその一人だが、ふと3階の棋士室をのぞいてみたくなった。そこには熱心に行われているVSを笑顔で見ている里見の姿があった。

写真=相崎修司

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