名鉄名古屋駅の神業を拝んでから 神宮前駅(愛知県/名古屋鉄道本線/熱田神宮)
三種の神器のひとつ・草薙剣が祀られている熱田神宮は1月5日からの“初えびす”でも賑わいを見せる。その最寄り駅、神宮前駅もまた、鉄道マニアをうならせる魅力を持つ駅である。
神宮前駅は、名鉄本線と常滑線が分かれる分岐駅。そしてこの駅からお隣の金山駅までは名鉄で唯一複々線になっている。名鉄といえば、名鉄名古屋駅がわずか2本のホームで10〜20近い行き先の列車をさばいている“神業”でお馴染み。それが実現できているのも、神宮前から金山までが複々線になっているから。もちろん神宮前からもあらゆる行き先の列車が発着し、その行き先は名古屋本線の上下と常滑線あわせて29。それが行き交う様を見ていれば、一日中駅にいても飽きることはないはずだ。
ちなみに、この神宮前駅のある区間はJR東海道線と並走している。熱田神宮側にある駅ビルからはJRをまたぐ跨線橋でホームまで向かう構造。近くにはJR熱田駅もあるが、こちらは区間快速も停車しないしがない一般駅である。
臨時改札を拝みたい 太宰府駅(福岡県/西鉄太宰府線/太宰府天満宮)
学問の神様・菅原道真が祀られる太宰府天満宮の最寄り駅。駅舎そのものが太宰府天満宮を模した造りで、参拝ムードを掻き立てる。で、駅前の参道を東に行けば5分程度で太宰府天満宮。臨時改札も設けられているなど、まさに参拝客のための駅である。
そんなあたりからもわかる通り、太宰府駅は川崎大師・成田と同様に参拝客輸送を目的に誕生した。開業したのは1902年で、なんと当時は“馬車鉄道”だった。1913年に蒸気機関車が走り始め、1927年に電化されている。太宰府駅開業時は西鉄天神大牟田線も開通する前で、いわば現在の西鉄のルーツ路線のひとつ。京急も大師線がルーツだったように、太宰府駅は寺社参拝がいかに鉄道にとって魅力的だったのかを教えてくれる駅なのだ。
初詣シーズンは受験シーズン直前でもある。菅原道真にあやかろうとする受験生たち、ついでにこんな駅の歴史も学んでみれば、合格に一歩近づくかもしれない。
と、鉄道の歴史から廃線跡、神業運転の秘密までだいぶマニアックな視点で紹介した初詣ステーションベスト5。年が明け、鉄道の“初乗り”が初詣という人も多いことだろう。ならばただ乗るだけでなく、初詣ステーションに秘められた鉄道と初詣の深い関係に思いを馳せて、少しだけ知的な(マニアックな?)お正月を迎えてみるのもいいのではないだろうか。もちろん、同行者にうんちくを語るのはほどほどに……。
写真=鼠入昌史