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「築地市場の跡地を買って……」

石山 昔は「築地市場の跡地を買って、敷地中に電線を巡らせたい」と考えていたんですけど、今は非現実的だと思っています(笑)。

――(笑)。現実的な活動としては?

石山 最近は電線という視点から、日本の社会がどんな形に変化してきたのかを少しずつ勉強しています。人文学的な立場から電線を見たときに、どういう発見があるのか興味を持ち始めたんです。だから人文書を読みつつ、電線につなげられる考え方がないかと思うようになりました。

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『ラインズ 線の文化史』(ティム・インゴルド著、工藤晋訳、左右社)という本に登場する、「線」というキーワードから人間の歴史や文化をひもとく考え方がすごく面白くて、同時にちょっと難しかった。私は「線」を「電線」に置き換えて調べたり、考えたりしてみたいんです。

 

「電線にはこんないいところもあるんだよ」と発信したい

――どんなきっかけでそのようなお考えに。

石山 『ネットワークシティ 現代インフラの社会学』(田中大介編著、北樹出版)という本の電柱・電線の章を読んだときに、自分が考えていることや知りたかったことに近い内容がまとめて書いてあったんです。そしたら、今まで自分が疑問に思っていたことをさらに調べてみたくなってしまって。人文書を電線目線で読むようになったのも、そこからですね。これからはもっと視野を広げて、電線のことを深掘りしたいと思っています。

――電線愛好家としての活動の幅が広がりそうですね。

石山 電線は一見ぐちゃぐちゃしているし、地震のときに電柱が折れたりするとライフラインが止まってしまう。

 そういったマイナス面だけでなく、プラス面もあることを発見し、伝えるのが私の役目だと思っています。普段みなさんの目に見えていない部分を見てもらえるように、文化的な背景も学びながら、「電線にはこんないいところもあるんだよ」というのを気長に発信し続けていきたいですね。

 

写真=石川啓次/文藝春秋

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