小学3年生のとき、赤羽の街で電線の魅力に取り憑かれた俳優・文筆家の石山蓮華さん(29)。“電線沼”にハマった彼女は、1万5000枚以上の電線写真を撮りため、電線に対してエロさまで感じるように。「電線愛好家」を自称し、電線の魅力を発信し続けた結果、2022年6月7日には「電線アンバサダー」に正式就任した。

 そんな石山さんはかつて、あるコンプレックスを抱えながら芸能活動をしていたという。しかし電線によって自身の世界が広がり、自信をもって「自分らしさ」を表現できるようになった。「電線に救われ、助けられてきた」と話す彼女に、その真意を聞いた。(全2回の2回目/1回目から続く)

石山蓮華さん ©石川啓次/文藝春秋

◆◆◆

ADVERTISEMENT

テレビで仕事しているのに、キラキラしていない自分に不安だった

――前編では、電線の魅力を発信することで「俳優業も楽な形で取り組めて、電線に助けられた」とおっしゃっていました。その部分をもう少し詳しくお聞きしても良いでしょうか。

石山蓮華さん(以下、石山) 私は「電線愛好家」という肩書きを持たずに活動していた頃もあったんです。俳優の仕事はすごくやりがいがあったんですけど、一方でとても窮屈に感じたり、モヤモヤが渦巻いたりしていました。

――どんなモヤモヤを抱えていたのでしょう。

石山 朝の情報番組の仕事をしていたとき、右を見ても左を見てもキラキラした同世代の女性たちがたくさんいたんですよね。みんな驚くほど性格も良くて。

 一方で私は、彼女たちに比べてうまく話もできないし、性格は卑屈だし……。「テレビで仕事しているのに、私はキラキラしていなくて大丈夫なのかな」と不安に思っていました。

 

――芸能界のキラキラした雰囲気と、ご自身の性格にギャップがあったと。

石山 テレビのレポーターのお仕事では、「女性としてこうあるべき」みたいな姿が割としっかり決まっていたんです。衣装の規定は明文化されてないけど、ほとんどの現場で“コンサバ系”のファッションを希望される。例えば「可愛らしくて爽やかに見える印象を出したいから、トップスはふんわり軽めに」とか。「声はオクターブ高く出す」ことを求められたりもして。